例えば物品販売店舗で屋内消火栓が必要な面積って700㎡だって施行令第11条1項で書かれてるよね。でもそれぐらいの規模では付いてないことが多いと思うんだけど?
屋内消火栓の設置に緩和規定ってあるの? 2倍読み、3倍読みって耳にするけど何のこと?
主要構造部だとか建築基準法第二条第九号の三イ若しくはロが何なのか分からない… 耐火、準耐火の種別って何?
屋内消火栓設備は消防法施行令第11条第2項で基準となる面積を2倍、3倍に緩和することが可能であり、このことを「倍読み」と言います。この記事では「倍読み」の条件である建築構造について建築基準法から、基準となる面積を消防法の観点から分かり易く解説します。
屋内消火栓の倍読みって何!? 基本の面積は用途により異なる!
屋内消火栓設備は消防法施行令第11条第1項で用途と面積により設置義務が生じることが定められています。しかし、消防法施行令第11条第2項ではその面積を2倍、3倍に緩和することが可能とされており、このことを「倍読み(2倍読み)」、「3倍読み」と言います。
この倍読みでキーポイントとなるのが主要構造部等の建築基準法への理解と基準となる面積です。今回は、この倍読み基準について消防法の面積という視点と建築基準法での構造への視点の両方を徹底解説します!
第1項 屋内消火栓の設置が必用となる面積
消防法施行令第11条第1項では屋内消火栓設備の設置が必要となる面積が定められています。屋内消火栓の設置について基本は700㎡ですが、1項(劇場、集会場等)、11項(神社、寺院等)、15項(その他の事業場)は異なる点がポイントです!
無窓階になってもこれらの用途についての区分けは同じですよ。
まとめると次のようになります。
基本 700㎡(無窓階:150㎡)
1項 500㎡(無窓階:100㎡)
11項、15項は1000㎡(無窓階:200㎡)
根拠となる法令も上記のまとめと同じ様に色分けしていますので該当する部分を確認してみて下さい。
第2項 倍読みについて
消防法施行令第11条第2項は倍読みの緩和について定められており、倍読みについて3倍と2倍に大きく分かれています。
3倍読みの条件はたった1つだけです。
- 主要構造部が耐火+内装制限(難燃以上)
2倍読みの条件は2つあります。
- 主要構造部が耐火構造
- 建築基準法第二条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当+内装制限(難燃以上)
「主要構造部が耐火構造」に着目すると「耐火構造だけ」なら2倍読み適用、さらに内装制限を加えれば3倍読みが適用されます。
2倍読みの準耐火については少し複雑なので、これらの建築構造について後に詳しく解説します。
建築基準法と倍読みの内装制限は異なるって知ってる?
少し話は脱線しますが、屋内消火栓の内装制限と建築基準法の内装制限で制限される範囲が異なることを知っていましたか? 建築基準法の内装制限は居室と避難経路で求める性能が異なり、居室は難燃、避難経路は準不燃を求めることが基本です(特殊建築物の場合)。
しかし、その内装制限の範囲は床面から1.2m以内は除かれており、可燃物の腰壁が設置可能です。消防法で定める屋内消火栓の倍読みでは床面から1.2m以内の部分も内装制限の範囲であるため、建築基準法で除かれる部分であっても内装制限が必用という訳です。
でも難燃材料の内装制限って具体的に時間に表すと何分の性能かご存じですか?
たったの5分です。
火災初期の消火を目的とした設備であるため、それほど長い時間は求めていない訳ですね。
倍読みの上限が異なる!? 6項イ(1)、(2) 6項ロは要注意!
先ほど倍読みについて2倍から3倍になると解説しましたが、実は6項イ(1)、(2)及び6項ロは倍読みの上限が異なります
簡単にまとめると防火上の措置が講じられ、床面積が1000平方メートル以上の地階若しくは無窓階又は床面積が1500平方メートル以上の4階以上10階以下の階に存する部分でない場合の倍読みは次の数値になります。
- 2倍読み 1400㎡又は1000㎡に特定の室を加えた数値のどちらか小さい数値
- 3倍読み 2100㎡又は1000㎡に特定の室を加えた数値のどちらか小さい数値
6項イ(1)、(2) 6項ロの倍読みについての解説
これらの用途はスプリンクラーの設置が面積に拘わらず必用なものですよね。倍読みの本文中でも次のように限定的なものとされています。
次条第一項第一号に掲げる防火対象物とは第12条第1項第1号のことであり、スプリンクラーの設置が面積に拘わらず必用な用途ですね。
前項第2号とは令第11条第1項第2号のことで、別表第一(2)項から(10)項まで、(12)項及び(14)項に掲げる防火対象物は、延べ面積が700㎡以上のものに屋内消火栓設備の設置が義務付けられています。
同条第二項第三号の二の総務省令で定める部分とは、令第12条第2項第3号の2で定められる「防火上有効な措置が講じられた構造を有するものとして総務省令で定める部分(規則13の5の2)」を指しています。
その条件は次の3点を満たすことです。
- 手術室、分娩室、内視鏡検査室、人工血液透析室、麻酔室、重症患者集中治療看護室その他これらに類する室、レントゲン室等放射線源を使用し、貯蔵し、又は廃棄する室
- イ又はロの防火上の措置が講じられた部分であること
イ 準耐火構造の壁及び床で区画され、かつ、開口部に防火戸(随時開くことができる自動閉鎖装置付きのもの又は随時閉鎖することができ、かつ、煙感知器の作動と連動して閉鎖するものに限る。)を設けた部分
ロ 不燃材料で造られた壁、柱、床及び天井(天井のない場合にあつては、屋根)で区画され、かつ、開口部に不燃材料で造られた戸(随時開くことができる自動閉鎖装置付きのものに限る。)を設けた部分であつて、当該部分に隣接する部分(第十三条第三項第六号に掲げる部分を除く。)の全てがスプリンクラー設備の有効範囲内に存するもの
- 床面積が千平方メートル以上の地階若しくは無窓階又は床面積が1500㎡以上の4階以上10階以下の階に存する部分でないこと。
これらの倍読み規定の上限の設定はスプリンクラー設備が設置される場合は気にしなくても問題ありませんが、スプリンクラー設備を「火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するもの」で設置していない場合は要注意です。スプリンクラー設備は免除できるけれども屋内消火栓は必要となる可能性は十分ありますよ。
2倍読みや3倍読みの条件である「主要構造部を耐火構造」の疑問を解決!
まずは3倍読みが可能な主要構造部を耐火構造について解説します。
建物を主に構成する壁、柱、床、はり、屋根又は階段の6種が主要構造部とされています。
主要構造部からは最下階の床や屋外階段が除かれています。この辺りはイメージが付きますが、建築物の構造上重要でない間仕切壁も除かれています。しかし、除かれないような「建築物の構造上重要な間仕切壁」って何でしょうか?
ここで示している「建築物の構造上重要な間仕切壁」とは耐力構造上必要な間仕切り壁だけでなく、一般に≪主要間仕切り≫と呼ばれる建築基準法施行令第114条も含みます。
≪主要間仕切り≫は主要構造部に含まれるため、主要構造部が耐火構造なら耐火性能が必用です。しかし、法文上は紛らわしい書き方がされているため誤解を生むこともあります。
令第114条で求められている性能はガッツリ準耐火と書かれいていますね。
くどいようですが、主要間仕切りは主要構造部であるため、耐火建築物なら主要間仕切りも耐火構造とする必要がある。
これは「防火避難規定の解説」でも解説されています。
建築士さんが絡む場合なら、防火上主要な間仕切り壁は主要構造部であることを知っており耐火構造や準耐火構造にされますが、消防設備業者や内装業者だと知らないこともありました…
間仕切り変更する際に、主要間仕切りが準耐火性能しか無い場合は3倍読みが適用できなくなってしまう可能性があります!間仕切り変更の相談を受けた際には十分に注意してください。
「ここは主要間仕切りと言って、建物の主要構造部ですので、耐火構造にして下さい」と説明できる必用がありますね。
2倍読みの条件 建築基準法第二条第九号の三イ若しくはロを解説!
では次に倍読みの条件となる建築基準法第二条第九号の三イ若しくはロについて見てみましょう。これは法文をきっちり読み進めることが重要です!
端的に纏めると主要構造部が準耐火構造かそれと同等の性能が求められています。
イ 主要構造部を準耐火構造としたもの に関しては主要構造部を準耐火構造としたものとされています。少し脱線しますが、このイ準耐には45分以上の時間が定められているって知っていますか?(令和元年6月25日施行の建築基準法改正より)
イ準耐は耐火相当となるイー1準耐火(60分)と従来通りのイー2準耐火(45分)がありましたが、建築基準法改正により最低45分以上へと変わりましたね。
本題に戻り、ロに関しては同等の性能を求めるに留まっています。ロの同等の性能については2種類に分かれており施行令第109条の3へと飛びます。
複雑なので簡単に纏めるとロー1準耐火は外壁耐火、ロー2準耐火は不燃構造となります。
ピンときた方もいるかもしれませんが、木造ベースの避難時対策時間で設計した建築物はこれらに該当しないため倍読み規定が適用されませんよ! 令和元年6月25日の改正建築基準法施行に伴い避難時対策時間や通常火災終了時間の最低時間が45分に定められたため木造新基準の避難時対策準耐火構造や火災時対策準耐火構造は〈イ 主要構造部を準耐火構造としたもの 〉に該当し、2倍読みの適用が可能です。
確認申請書第4面の新様式は主要構造部を新たに追加!倍読みの判断が容易に!
建築基準法改正により、令和元年6月25日以降の確認申請では様式が変更され、主要構造部が第4面に記載されています。今までは建築物種別であったため、主要構造部が耐火構造であっても防火設備が入っていなければその他の建築物と区分されていました。その場合倍読みが適用できるかどうかは耐火リストで判断していましたね。
倍読みの判断はすごく容易になりましたね。でも、屋外消火栓や消防用水の設置は準耐火建築物や耐火建築物が基準になるため、延焼ライン内の防火設備の設置は新たに判断する必要があることに注意が必要です。
要注意! 倍読みできない事例を紹介!
倍読みの適用ができないと判断した鉄骨造の作業場について事例を紹介します。防火対象物の例を挙げますと、鉄骨造の作業場でした。
外壁部分は金属性で不燃性能は有していましたが、内側に石膏ボードが無い状態でしたので【外壁の延焼のおそれのある部分にあつては、防火構造】が満たせていないと判断したことがあります。
金属サイディングの仕様書等を見ると良くわかります。防火構造にするためには石膏ボード○○mm以上、外壁耐火とするためには石膏ボード○○mm以上と記載されていますよ。
他には鉄骨柱の耐火被覆が無くなっており、耐火構造でなくなっている!?という事案もありましたよ。主要構造部や構造の理解は重要です!
まとめ
- 屋内消火栓の設置の基準面積は700㎡が基本であるが、1項、11項、15項は異なるため注意が必要!
- 3倍読みの条件は主要構造部が耐火構造&内装制限
- 2倍読みの条件(その1)は主要構造部が耐火構造
- 2倍読みの条件(その2)は建築基準法第二条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当&内装制限(難燃以上)
- 建築基準法第二条第九号の三イ若しくはロとは「準耐火構造」、「外壁耐火」、「不燃構造(延焼ライン内は防火構造)」を示す
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