特定施設水道連結型スプリンクラー設備を設置できる用途は限定される! 設置できる用途と面積について分かり易く解説!

病院内の手術室 消火設備

特定施設水道連結型スプリンクラーって言葉があるけど、普通のスプリンクラー設備とは何が違うの?

特定施設水道連結型スプリンクラー設備って使用できる用途が限定されているみたいだけどよく分からない…

この記事では特定施設水道連結型スプリンクラー設備についての設置条件等について解説し、上記のような疑問を法文をベースで解決します。

特定施設水道連結型スプリンクラーとスプリンクラー設備の違いは?

特定施設水道連結型スプリンクラーという言葉を耳にしたことはありますか? 老人福祉施設の小規模なものなどに設置されていますが一般のスプリンクラーとは大きく異なります。

違いの中で最も大きいものは「設置費用」です。なぜ設置費用に大きく異なるかを説明すると、一般のスプリンクラー設備で必用とされる「非常電源設備(発電機)」、「ポンプ」、「消火水槽」が基本的に不要となります。

そんな要ともなる部分が無くても設置できる理由があるんです。

一般のスプリンクラー設備は火災発生時は出火エリアの消火を目的とし、万が一消火できなかったとしても、消火隊が送水口から水を投入して継続した消火活動が可能となりますね。しかし、特定施設水道連結型スプリンクラー設備の設置の目的は同じではないのです。あくまでも避難時間を稼ぐための位置づけです。

一般のスプリンクラー設備の目的 → 出火エリアの消火

特定施設水道連結型スプリンクラー設備の目的 → 延焼拡大を遅らせ避難時間を稼ぐ

特定施設水道連結型スプリンクラー設備は一般水道の水道圧を利用して放水されます。流量についても水道の蛇口を目いっぱい捻った時と同じです。水圧に関しても、それほど高圧にはなりません。

水道のホースを絞った時の放水イメージ

そんな一般のスプリンクーとは設置の目的から異なる特定施設水道連結型スプリンクラー設備が設置できる用途や規模は限定されています。用途や規模について以下解説します!

特定施設水道連結型スプリンクラー設備が設置できる用途について

施行令第12条第2項3の2には特定施設水道連結型スプリンクラー設備を設置することが出来る規模用途について定められています。

用途は非常に限定されており、別表第一(六)項イ(1)及び(2)(六)項ロだけです。

これらの用途は災害弱者が就寝する施設であるため、面積に拘わらず0㎡からスプリンクラー設備の設置が必要になりますね。しかし、0㎡から非常発電やスプリンクラーポンプ、消火水槽の設置を求めるには経済的負担が大きすぎるため、このように特定施設水道連結型スプリンクラー設備の設置が可能という訳です。

令第十二条第二項三の二

特定施設水道連結型スプリンクラー設備(スプリンクラー設備のうち、その水源として、水道の用に供する水管を当該スプリンクラー設備に連結したものであつて、次号に規定する水量を貯留するための施設を有しないものをいう。以下この項において同じ。)は、前項第一号及び第九号に掲げる防火対象物又はその部分のうち、防火上有効な措置が講じられた構造を有するものとして総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計が千平方メートル未満のものに限り、設置することができること。

(スプリンクラー設備に関する基準)

令第十二条 スプリンクラー設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。

一 次に掲げる防火対象物(第三号及び第四号に掲げるものを除く。)で、火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するもの以外のもの

 イ 別表第一(六)項イ(1)及び(2)に掲げる防火対象物

 ロ 別表第一(六)項ロ(1)及び(3)に掲げる防火対象物

 ハ 別表第一(六)項ロ(2)、(4)及び(5)に掲げる防火対象物(介助がなければ避難できない者として総務省令で定める者を主として入所させるもの以外のものにあつては、延べ面積が二百七十五平方メートル以上のものに限る。)

二 別表第一(一)項に掲げる防火対象物(次号及び第四号に掲げるものを除く。)で、舞台部(舞台並びにこれに接続して設けられた大道具室及び小道具室をいう。以下同じ。)の床面積が、当該舞台が、地階、無窓階又は四階以上の階にあるものにあつては三百平方メートル以上、その他の階にあるものにあつては五百平方メートル以上のもの

三 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ及び(十六)項イに掲げる防火対象物で、地階を除く階数が十一以上のもの(総務省令で定める部分を除く。)

四 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項及び(九)項イに掲げる防火対象物(前号に掲げるものを除く。)のうち、平屋建以外の防火対象物で、総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計が、同表(四)項及び(六)項イ(1)から(3)までに掲げる防火対象物にあつては三千平方メートル以上、その他の防火対象物にあつては六千平方メートル以上のもの

五 別表第一(十四)項に掲げる防火対象物のうち、天井(天井のない場合にあつては、屋根の下面。次項において同じ。)の高さが十メートルを超え、かつ、延べ面積が七百平方メートル以上のラック式倉庫(棚又はこれに類するものを設け、昇降機により収納物の搬送を行う装置を備えた倉庫をいう。)

六 別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの

七 別表第一(十六の三)項に掲げる防火対象物のうち、延べ面積が千平方メートル以上で、かつ、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積の合計が五百平方メートル以上のもの

八 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる建築物その他の工作物で、指定可燃物(可燃性液体類に係るものを除く。)を危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の千倍以上貯蔵し、又は取り扱うもの

九 別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物(第六号に掲げるものを除く。)の部分のうち、同表(六)項イ(1)若しくは(2)又はロに掲げる防火対象物の用途に供されるもの(火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するものを除く。)

十 別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物(第三号に掲げるものを除く。)で、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分(総務省令で定める部分を除く。)の床面積の合計が三千平方メートル以上のものの階のうち、当該部分が存する階

十一 前各号に掲げる防火対象物又はその部分以外の別表第一に掲げる防火対象物の地階、無窓階又は四階以上十階以下の階(総務省令で定める部分を除く。)で、次に掲げるもの

 イ 別表第一(一)項、(三)項、(五)項イ、(六)項及び(九)項イに掲げる防火対象物の階で、その床面積が、地階又は無窓階にあつては千平方メートル以上、四階以上十階以下の階にあつては千五百平方メートル以上のもの

  ロ 別表第一(二)項及び(四)項に掲げる防火対象物の階で、その床面積が千平方メートル以上のもの

 ハ 別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物の階のうち、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存する階で、当該部分の床面積が、地階又は無窓階にあつては千平方メートル以上、四階以上十階以下の階にあつては千五百平方メートル(同表(二)項又は(四)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分が存する階にあつては、千平方メートル)以上のもの

十二 前各号に掲げる防火対象物又はその部分以外の別表第一に掲げる防火対象物の十一階以上の階(総務省令で定める部分を除く。)

特定施設水道連結型スプリンクラー設備が設置できる規模について

しかし、これらの用途でも一定規模以上になれば、避難時間を稼ぐための位置付けとなる特定施設水道連結型スプリンクラー設備では役割を果たせないと考えられています。

防火上有効な措置が講じられた構造を有するものとして総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計が1000㎡未満のものに限り、設置することができるとされています。

基準面積は床面積から手術室等を除いた面積(最大2分の1)であり、具体的には手術室、レントゲン室等を一定基準の防火措置をすれば床面積から引くことができます。理論上は2000㎡弱の老人福祉施設でも特定施設水道連結型スプリンクラー設備の設置が可能です。

規則第十三条の五の二(防火上有効な措置が講じられた構造を有する部分)

令第十二条第二項第三号の二の総務省令で定める部分は、次のいずれにも該当する部分(当該部分の床面積の合計が当該部分が存する防火対象物の延べ面積に二分の一を乗じて得た値を超える場合にあつては、当該二分の一を乗じて得た値の面積に相当する部分に限る。)とする。

一 第十三条第三項第七号又は第八号に掲げる部分であること。

七 手術室、分娩室、内視鏡検査室、人工血液透析室、麻酔室、重症患者集中治療看護室その他これらに類する室

八 レントゲン室等放射線源を使用し、貯蔵し、又は廃棄する室

二 次のいずれかに該当する防火上の措置が講じられた部分であること。

 イ 準耐火構造の壁及び床で区画され、かつ、開口部に防火戸(随時開くことができる自動閉鎖装置付きのもの又は随時閉鎖することができ、かつ、煙感知器の作動と連動して閉鎖するものに限る。)を設けた部分

 ロ 不燃材料で造られた壁、柱、床及び天井(天井のない場合にあつては、屋根)で区画され、かつ、開口部に不燃材料で造られた戸(随時開くことができる自動閉鎖装置付きのものに限る。)を設けた部分であつて、当該部分に隣接する部分(第十三条第三項第六号に掲げる部分を除く。)の全てがスプリンクラー設備の有効範囲内に存するもの

三 床面積が千平方メートル以上の地階若しくは無窓階又は床面積が千五百平方メートル以上の四階以上十階以下の階に存する部分でないこと。

まとめ

特定施設水道連結型スプリンクラー設備が設置できる規模用途は理解できましたか? 一般スプリンクラー設備との目的の違いを理解し、関係者にも説明できるようにしましょう。

特に消防訓練指導がある場合はチャンスです。ほとんどの施設関係者はスプリンクラーは有効に消火してくれると高を括っています。

最後になりましたが、特定施設水道連結型スプリンクラー設備最大の注意点は水道工事による断水や冬場の凍結です! 消防計画等に必ず記載し、認識してもらうように心掛けましょう。

予防技術検定にチャレンジ! 特定施設水道連結型スプリンクラー編

問題

次のスプリンクラーを設置しなければならない防火対象物のうち、特定施設水道連結型スプリンクラー設備が設置できるものとして誤っているものを1つ選べ。

  1. 別表第一(六)項イ(1) ≪400㎡≫
  2. 別表第一(六)項ロ(3) ≪800㎡≫
  3. 別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物で、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積の合計が三千平方メートル以上のものの階のうち、(六)項イ(4)の部分 ≪16項イ4000㎡/(六)項イ100㎡≫
  4. 別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物の部分のうち、同表(六)項イ(2)に掲げる防火対象物の用途に供されるもの≪(十六の二)項800㎡/(六)項イ(2)100㎡≫

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答え

3.別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物で、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積の合計が三千平方メートル以上のものの階のうち、(六)項イ(4)の部分 ≪16項イ4000㎡/(六)項イ100㎡≫

※特定施設水道連結型スプリンクラー設備が設置できる条件はとても限定的です。設問の3については一般スプリンクラーが必要になるため誤りです。

4.(十六の二)項に関しては1000㎡以上になると特定施設水道連結型スプリンクラー設備が設置できない点についても重要なポイントですね。

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