消防設備等の設置維持義務って消防法第17条第1項の事で、附加条例って同条第2項の事だよね。消防設備の種類と併せて分かり易く教えて!
消防用設備等の設置維持義務は消防法第17条第1項に定められており、その対象は令別表第一に掲げられる全ての防火対象物です。同条第2項では附加条例について定められており、消防設備等の基準に地域の特殊性に応じた追加措置を市町村条例で定める事が可能とされており、定められた条例の内容についても設置し維持しなければならない技術上の基準となります。
この記事では消防設備の設置維持義務、附加条例、消防設備の種別について分かり易く解説します。
消防法第17条第1項は消防設備の設置維持が義務付けられる!
消防法第17条第1項の設置維持義務の対象となる防火対象物は「学校、病院、工場…」と例が挙げられていますが、令別表第1に掲げられる全ての防火対象物が対象とされています。また、その設置維持義務を負うのは「関係者」であり、所有者、管理者又は占有者を指します。この所有者、管理者、占有者の中から誰を名宛人として消防法第17条の4に基づく設置命令をするかについては他の記事で解説していますのでそちらをご覧下さい。
自動車に設置される消火器について
消防法第17条第1項の対象は全ての防火対象物と定められています。
では自動車に設置される消火器についても設置維持義務の対象なのでしょうか?
結論からお話すると、指定数量以上の危険物や150Kg以上の高圧ガスを運送するような車両は消防法施行令別表第一に掲げる防火対象物となり、関係者に消防用設備等の設置維持義務が生じます。
道路運送車両法に基づく命令の規定により消火器具を設置することとされる車両は施行令別表第一の(20)項に該当します。
ではどのような車両が消火器具の設置義務を有しているのでしょうか?
まずは道路運送車両の保安基準を見てみましょう。
意外と忘れてしまいそうですが、消防法施行令第10条でも(20)項について記載されています。(20)項は面積に関係無く消火器の設置義務が生じていることが分かります。
これらにより、消防法第17条第1項に基づき消火器の設置維持義務が生じる訳です。
附加条例とは?
そして忘れてはいけないのが消防法第17条第2項の附加条例についてです。
消防法令で定められる消防用設備等の技術上の基準では地域に応じた火災危険性に対応できないと考えられる場合には消防法第17条第2項に基づき附加条例を定めることができます。そして附加条例で定めた基準については消防法第17条第1項の基準が適用されます。
つまり、条例で定めた基準等に関して消防法第17条第1項に基づく消防用設備等の設置維持義務を課すことができるのです。
附加条例の例と(19)項がもつ意味
消防法施行令別表第1(19)項は「市町村長の指定する山林」ですね。しかし、消防法施行令を読んでも消防用設備等の設置義務は定められていませんよね。それなのに消防法第17条の3の3の点検義務の対象には入っている…
これって何なんだろう?と疑問を感じたことはありませんか?
答えは附加条例にあります。
例えば、その地方の気候又は風土の特殊性上、山林火災が後を絶たない状態だったとします。その対策として附加条例で山林に建てられる山小屋全てに消火器を設置する条例を消防法第17条第2項を根拠に定めたとします。
そうすると「市町村長の指定する山林」である(19)項に設置される消火器は消防法第17条第1項の規制を受け、消防用設備等の設置維持義務を関係者に課すことができるのです。さらに言えば、消防法第17条の3の3の対象は(20)項を除く全ての令別表第1に掲げる防火対象物であるため、点検報告義務さえも課すことが可能となります。
消防用設備等の種類は大きく3つに分かれる!
消防用設備等の種類と設備名称は一致していますか? 消防用設備は大きく分けて次の3つに区分されます。消防の用とは公設消防のみならず一般的な初期消火や避難活動全般を指しますよ。
1.消防の用に供する設備
①消火設備、②警報設備、③避難設備に分かれており、火災初期のような公設消防到着前に施設の関係者が使用することを想定しています。
2.消防用水
文字通り、有事の際に使用する水源のことです。
3.消火活動上必要な施設
公設消防隊の活動を支援するための設備のことです。
この大きく区分された3つについて少し詳しく見てみましょう!
消火設備(消防の用に供する設備)
消火設備は水その他消火剤を使用して消火を行う機械器具又は設備のことです。具体的には次の用な機械器具又は設備を指します。
- 消火器、簡易消火用具 (水バケツ、水槽、乾燥砂、膨張ひる石、膨張真珠岩 )
- 屋内消火栓設備
- スプリンクラー設備
- 水噴霧消火設備
- 泡消火設備
- 不活性ガス消火設備
- ハロゲン化物消火設備
- 粉末消火設備
- 屋外消火栓設備
- 動力消防ポンプ設備
ところで、この消火設備に関しては建築設備でもあることを知っていましたか? 建築基準法第2条では建築物に設ける消火設備は建築設備であることが定められています。なので建築士さんはスプリンクラー設備や屋内消火栓設備については特にプライドを持って設計されていますよ。
警報設備(消防の用に供する設備)
警報設備は火災の発生を報知する機械器具又は設備です。いち早く火災を周知し、避難行動を取らせることができるため、最も人命に直結する設備と筆者は考えています。具体的には次の用な機械器具又は設備を指します。
- 自動火災報知設備
- ガス漏れ火災警報設備(液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和四十二年法律第百四十九号)第二条第三項に規定する液化石油ガス販売事業によりその販売がされる液化石油ガスの漏れを検知するためのものを除く。以下同じ。)
- 漏電火災警報器
- 消防機関へ通報する火災報知設備
- 警鐘、携帯用拡声器、手動式サイレンその他の非常警報器具
- 非常警報設備 (非常ベル 、自動式サイレン、放送設備)
非常警報設備と自動火災報知設備の関係は少し面白いですね。基本的には自動火災報知設備は非常警報設備の上位設備として捉えられています。その理由は感知器の設置により火災を自動的にベル等で防火対象物全体に知らせる事ができるためです。発信機を押下しなければ起動しない非常警報設備よりも初期対応が早いですね。しかし、一定の収容人員以上になるとベルの鳴動だけでは情報量が不足します。そこで登場するのが非常警報設備の中でも放送設備です。スピーカーから流れる音声により火災の発生場所や避難方法を知らせる事ができますね。
警報設備の能力は次のように表すことが出来ます。
非情警報設備(非常ベル)<自動火災報知設備<自動火災報知設備+非常警報設備(放送設備)
避難設備(消防の用に供する設備)
避難設備は、火災が発生した場合において避難するために用いる機械器具又は設備のことを指します。避難時に使用する避難器具だけでは無く、誘導灯も避難設備に含まれますよ!
具体的には次のような設備です。
- すべり台
- 避難はしご
- 救助袋
- 緩降機
- 避難橋
- 誘導灯
- 誘導標識
避難設備は緩和規定も多いことが特徴です。避難器具は建物構造や安全性の高い階段を設置することで免除されます。避難器具で避難するよりも屋外避難階段で避難する方が安全ですもんね。誘導灯や誘導標識は見通しが良ければ規則28条の2て設置免除も可能ですね。
消防用水
消防用水は、防火水槽又はこれに代わる貯水池その他の用水のことです。目的はもちろん消火のための水を確保することです。
消火活動上必要な施設
消火活動上必要な施設は、公設消火隊が消火活動を実施するために必要な設備になります。高層化や広域化、地下での活動は非常に困難を極めるため活動を補助する設備の設置が義務付けられています。消防機関はこれらの設備を使用するときは消防法と設置者に感謝しかないですね。
- 排煙設備
- 連結散水設備
- 連結送水管
- 非常コンセント設備
- 無線通信補助設備
高層建築物では度々お世話になる非常用エレベーターの設置は建築基準法で定められています。法令で非常用エレベーターの設置が義務付けられていることは国際的にみても珍しいんですよ。アメリカでは2001年9月11日のアメリカ同時多発テロを受けて法整備されました。ついつい消防活動上必要な施設かと勘違いしそうですが根拠法令が異なることに留意して下さい。
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