消防設備士の独占業務とは 消防設備士の資格と工事を分かりやすく解説!

消防用設備等の配置を設計する消防設備士 消防用設備等

甲種の消防設備士でなければ消防用設備等の設置工事ができないってことは知ってるけども、消防用設備に関連する設備全般が対象なのかな?

誘導灯なら蛍光灯の交換も工事? 自火報なら発信機の表示灯の交換も着工届が必用?消防設備士工事の対象範囲を教えて!

消防設備士は実務に携わっていなくても再講習が必用って本当!?

消防法第17条の5では消防設備士免状の交付を受けていない者が消防設備等について一定以上の工事や整備をすることを禁止していますね。万が一火災が発生した時にのみ消防用設備等が使用される訳ですが、整備不良や工事施工不良で使用できなければ意味がないどころか人命にかかわる危険性もあります。よって消防用設備等の工事や整備は消防設備士の独占業務として専門家が確実に適切な工事を行う事を義務付けています。

この記事では、消防設備士の独占業務の対象範囲や着工届の必要性、軽微な工事の範囲についてを解説し、上記のような疑問を解決します。

消防法 第十七条の五

消防設備士免状の交付を受けていない者は、次に掲げる消防用設備等又は特殊消防用設備等の工事(設置に係るものに限る。)又は整備のうち、政令で定めるものを行つてはならない。

一 第十条第四項の技術上の基準又は設備等技術基準に従つて設置しなければならない消防用設備等

二 設備等設置維持計画に従つて設置しなければならない特殊消防用設備等

設備等技術基準とは?

第十七条第一項の防火対象物のうち特定防火対象物その他の政令で定めるものの関係者は、同項の政令若しくはこれに基づく命令若しくは同条第二項の規定に基づく条例で定める技術上の基準(第十七条の三の二より)

消防設備士でなければ行ってはならない工事又は整備とは?

消防用設備等の設置状況
消防用設備等の設置工事は消防設備士の独占業務

消防法施行令第36条の2第1項では消防設備士でなければ行つてはならない工事について定められています。少し分かりやすく法文自体を次のように纏めました。消防設備士でなければ行つてはならない工事又は整備とは次の表に定められる消防用設備等の設置に係る工事ですが、水系の消火設備の配管や電源部分は対象から除かれています。

施行令第三十六条の二第一項(消防設備士でなければ行つてはならない工事)

 法第十七条の五の政令で定める消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置に係る工事は、次に掲げる消防用設備等(第一号から第三号まで及び第八号に掲げる消防用設備等については電源、水源及び配管の部分を除き第四号から第七号まで及び第九号から第十号までに掲げる消防用設備等については電源の部分を除く。)又は必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等若しくは特殊消防用設備等(これらのうち、次に掲げる消防用設備等に類するものとして消防庁長官が定めるものに限り、電源、水源及び配管の部分を除く。次項において同じ。)の設置に係る工事とする。

一 屋内消火栓設備 四  泡消火設備十一 金属製避難はしご
(固定式のものに限る。)
二 スプリンクラー設備 五 不活性ガス消火設備 十二 救助袋
三 水噴霧消火設備 六 ハロゲン化物消火設備 十三 緩降機
八 屋外消火栓設備 七 粉末消火設備

九 自動火災報知設備 

九の二 ガス漏れ火災警報設備

十 消防機関へ通報する火災報知設備 
消防設備士でかければ行ってはならない工事と消防用設備

消防用設備等については水系の消火設備電気設備、避難器具に分かれているのが分かりますね。

消防設備士でなければ行つてはならない〈設置に係る工事〉から除かれる対象

消防設備士でなければ行つてはならない工事から除かれる部分

  • 水系の消火設備は電源、水源、配管の部分の工事
  • 電気設備については電源の工事

電源は共通して設備士工事から除かれています!

消防設備士の工事や整備対象からは次のものが除かれていますが、消防設備士免状を有しないものが行えるというだけで、誰でも実施できる訳ではありません。例えば自火報や屋内消火栓の電源部分の工事には電気工事士の資格が必要です。

少し脱線しますが、小規模なホテル(5項イ)や老人ホーム(6項ロ)等に設置することができる特小自火報は自動火災報知設備に必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備ですが消防設備士工事の対象から外されています。

消防設備士でなくても行える消防用設備等の〈整備〉の範囲とは?

消防設備士でなければ行つてはならない整備から除かれる対象

  • 消火器の整備
  • 漏電火災警報器の整備
  • 消防設備士でなければ行つてはならない工事から除かれる部分の整備
  • 屋内消火栓設備の表示灯の交換等の軽微な整備

消防設備士の整備の対象となる消防用設備等は消防法17条の5を読むと法第10条や法第17条のあらゆる消防用設備等であることが分かりますが、そこから「消火器」、「漏電火災警報器」、「消防設備士でなければ行つてはならない工事から除かれる部分」が除かれています。

施行令第三十六条の二第二項(消防設備士でなければ行つてはならない整備)

法第十七条の五の政令で定める消防用設備等又は特殊消防用設備等の整備は、次に掲げる消防用設備等又は必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等若しくは特殊消防用設備等の整備(屋内消火栓設備の表示灯の交換その他総務省令で定める軽微な整備を除く。)とする。

一 前項各号に掲げる消防用設備等(同項第一号から第三号まで及び第八号に掲げる消防用設備等については電源、水源及び配管の部分を除き、同項第四号から第七号まで及び第九号から第十号までに掲げる消防用設備等については電源の部分を除く。)

二 消火器

三 漏電火災警報器

さらに、消防法規則第三十三条の二で定められるような軽微な整備も対象から除かれています。
注意点としては屋内消火栓設備の表示灯の交換は施行令で既に除かれていますよ!

規則第三十三条の二(消防設備士でなくても行える消防用設備等の整備の範囲)

令第三十六条の二第二項の総務省令で定める軽微な整備は、屋内消火栓設備又は屋外消火栓設備のホース又はノズル、ヒユーズ類、ネジ類等部品の交換、消火栓箱、ホース格納箱等の補修その他これらに類するものとする。

屋内消火栓や屋外消火栓のホース交換も消防設備士でなくても行える消防用設備等の整備の範囲ですので、自身での交換が可能ですね。

工事整備対象設備等の着工届は「いつ」「どんな工事」に提出するのか

甲種消防設備士は工事の着手の10日前までに「着工届」を消防長又は消防署長へ届け出る必要があり、消防法17条の14に記載されています。

では対象となる消防用設備等の工事は何かと言うと、消防法施行令第36条の2第1項に定められた消防用設備等の設置に係る工事になります。重要なポイントとして、消防設備士工事の対象と同様に、水系の消火設備は電源、水源、配管の部分の工事は除かれており、電気設備については電源の工事が除かれています。

例えば自火報の電源部分に係る工事単体の場合は消防設備士の独占業務からも外れているため、着工届ももちろん不要ですよ。

法第十七条の十四

甲種消防設備士は、第十七条の五の規定に基づく政令で定める工事をしようとするときは、その工事に着手しようとする日の十日前までに、総務省令で定めるところにより、工事整備対象設備等の種類、工事の場所その他必要な事項を消防長又は消防署長に届け出なければならない。

「着工届」に関連して、添付しなければならない書類は何なのかという疑問もありますが、これは規則第33条の18に記載されていますが全然具体的ではありません(汗)

求められる具体的な書類は各市町村町により異なり、火災予防条例や火災予防規則、運用基準などで定められていますので提出先の消防機関へ確認するのが一番です!

規則第三十三条の十八(工事整備対象設備等着工届)

法第十七条の十四の規定による届出は、別記様式第一号の七の工事整備対象設備等着工届出書に、次の各号に掲げる区分に応じて、当該各号に定める書類の写しを添付して行わなければならない。

一 消防用設備等 当該消防用設備等の工事の設計に関する図書

二 特殊消防用設備等 当該特殊消防用設備等の工事の設計に関する図書、設備等設置維持計画、法第十七条の二第三項の評価結果を記載した書面及び法第十七条の二の二第二項の認定を受けた者であることを証する書類

着工届を省略することができる〈軽微な工事〉の範囲とは?

着工届の省略で忘れてはいけないのが軽微な工事の範囲ですね。下表のものは平成19年12月5日付消防予第192号のものです。これを受けて着工届や現地検査の省略を定めていますが、各市町村の運用基準により個数や対象設備を変えている消防本部もあります。

例えば、誘導灯を着工届が必用としていて、一定の個数以下なら省略可能としていたり、屋内消火栓等の充水関連設備を軽微な工事の範囲としていたりいなかったりと消防機関によりマチマチです。

消防用設備等の種類増設移設取替え
屋内消火栓設備
屋外消火栓設備
消火栓箱
→2基以下で既設と同種類のものに限る。
→加圧送水装置等の性能(吐出量、揚程)、配管サイズ及び警戒範囲に影響を及ぼさないものに限る。
消火栓箱
→同一の警戒範囲内での移設
加圧送水装置を除く構成部品
スプリンクラー設備ヘッド
→5 個以下で、既設と同種類のもので、かつ、散水障害がない場合に限る。
→加圧送水装置等の性能(吐出量、揚程)、配管サイズに影響を及ぼさないものに限る。
補助散水栓箱
→2個以下で既設と同種類のものに限る。
ヘッド
→5 個以下で防護範囲が変わらない場合に限る。
補助散水栓箱
→同一警戒範囲内での移設
加圧送水装置、減圧弁、圧力調整弁、一斉開放弁を除く構成部品
水噴霧消火設備ヘッド
→既設と同種類のもの
→一の選択弁において 5 個以内
→加圧送水装置等の性能(吐出量、揚程)、配管サイズに影響を及ぼさないものに限る。
ヘッド
→一の選択弁において 2 個以内
手動起動装置
→同一放射区画内で、かつ、操作性に影響のない場合に限る。
加圧送水装置、減圧弁、圧力調整弁、一斉開放弁を除く構成部品
泡消火設備ヘッド
→既設と同種類のもの
→一の選択弁において 5 個以内
→加圧送水装置等の性能(吐出量、揚程)、配管サイズ、泡混合装置、泡消火剤貯蔵量等の能力に影響を及ぼさないものに限る。
ヘッド
→一の選択弁において 5 個以下で警戒区域の変更のない範囲②手動起動装置
→同一放射区画内で、かつ、操作性に影響のない場合に限る。
加圧送水装置(制御盤を含む)、泡消火剤混合装置、減圧弁、圧力調整弁を除く構成部品
二酸化炭素消火設備
ハロゲン化物消火設備
粉末消火設備
ヘッド・配管(選択弁の二次側に限る。)
→既設と同種類のもの
→5個以下で薬剤量、放射濃度、配管のサイズ等に影響を及ぼさないものに限る。
ノズル
→既設と同種類のもの
→5個以下で薬剤量、放射濃度、配管のサイズ等に影響を及ぼさないものに限る。
移動式の消火設備
→既設と同種類のもの
→同一室内に限る。
制御盤、操作盤等の電気機器起動用ガス容器、操作管、手動起動装置、火災感知器、放出表示灯、スピーカー、ダンパー閉鎖装置、ダンパー復旧装置
→既設と同種類のもの
→同一室内で、かつ、電源容量に影響を及ぼさないものに限る。
ヘッド・配管(選択弁の二次側に限る。)
→5個以下で放射区域の変更のない範囲
ノズル
→5 個以下で放射区域の変更のない範囲
移動式の消火設備
→同一室内に限る。
制御盤、操作盤等の電気機器、起動用ガス容器、操作管、手動起動装置、火災感知器、放出表示灯、スピーカー、ダンパー閉鎖装置、ダンパー復旧装置
→同一室内で、かつ、電源容量に影響を及ぼさないものに限る。
すべての構成部品
→放射区画に変更のないものに限る。
自動火災報知設備感知器
→既設と同種類のもの
→10 個以下
発信機、ベル、表示灯
→既設と同種類のもの
→同一警戒区域内に限る。
感知器
→10 個以下で警戒区域の変更がない場合に限る。
発信機、ベル、表示灯
→同一警戒区域内に限る。
感知器
→10 個以下
受信機、中継器
→7 回線を超えるものを除く。
発信機、ベル、表示灯
ガス漏れ火災警報設備検知器
→既設と同種類のもの
→5 個以下で警戒区域の変更がない場合に限る。
検知器
→5 個以下で警戒区域の変更がない場合に限る。
受信機を除く。
金属製避難はしご(固定式のものに限る。)
救助袋
緩降機
該当なし本体・取付金具
→同一階に限る。
→設置時と同じ施工方法に限る。

標識
本体・取付金具
→設置時と同じ施工方法に限る。
軽微な工事

消防設備士の資格の維持について再講習を受講しないと違反なのか!?

2019年4月12日 東京新聞で「指導側なのに消防法違反 消防設備士、講習受けず」という記事が掲載されました。記事によると消防設備士の資格を有する東京消防庁職員が少なくとも約8600人以上いますが、その多くが再講習を受講していないことを指摘しています。

結論からお話すると、消防設備士は3年ごとの再講習を必ず受講する義務があります。

消防法第十七条の十

消防設備士は、総務省令で定めるところにより、都道府県知事(総務大臣が指定する市町村長その他の機関を含む。)が行う工事整備対象設備等の工事又は整備に関する講習を受けなければならない。

消防法に定められる資格では他に危険物取扱者免状がありますね。

私は危険物取扱者免状を10年ほど前に取得しましたが、最近実務に携わることが無かったため再講習を受けていません。

危険物取扱者免状に関しては「危険物の取扱作業に従事する」とありますので法令違反にはなりませんね。NEWSで消防設備士の再講習義務について知ったときは消防設備士と危険物取扱者の違いを良く分かっていなかったので少し焦りましたよ(汗) 

でも、もうすぐ書き換えの時期と認識することができました。

再講習を受講していないとすぐさま減点されているのか? 具体例を紹介!

再講習未受講だと減点されてしまいますが、未受講者が全員自動的に減点されているかと聞かれるとそうではありません。実はシステム的には消防機関が違反を確知したならば、免状を発行している都道府県知事に知らせる事が決められています。

つまり、都道府県知事が免状の減点措置を行うのですが、消防機関が報告していない限り違反を知り得ることすらありません。

消防機関が違反を知り得るタイミングは消防設備の設置完了検査や点検報告の時です。そこで再講習漏れや着工届の届け出違反等があった場合等に都道府県知事に報告するため、実務上は消防設備士としての業務に従事していない限りは判明しないものとなっています。

違反の確知から減点までのステップは次のような流れになります。

  1. 工事の完了検査や点検報告で違反が判明
  2. 違反についての事実確認を消防機関が実施
  3. 消防機関が違反内容を纏め、都道府県知事に報告
  4. 都道府県知事が当該免状を減点

でも、再講習については発行母体である都道府県知事が管理すれば未受講者が判明するため、行政の連携不足な気がしますね…

まとめ

消防用設備の設計状況を確認する消防設備士
消防設備士の工事や整備、資格の特徴のまとめ
  • 消防設備士の工事の対象について、水系の消火設備は水管や電源部分が除かれる。
  • 消防設備士の工事の対象について、電気設備は電源部分が除かれる。
  • 消防設備士の工事の対象について、避難設備は金属製避難はしご(固定式のものに限る。)及び救助袋、緩降機の3種のみ。
  • 消防設備士の整備の対象について、消火器、漏電火災警報器は除かれる。
  • 消防設備士の整備の対象について、工事の対象から除かれる水管や電源部分は除かれる。
  • 消防設備士の整備の対象について、屋内消火栓設備の表示灯の交換のような簡易的なものは除かれる。
  • 甲種消防設備士は工事の着手の10日前までに「着工届」を消防長又は消防署長へ届け出る必要がある。
  • 消防設備士の資格は再講習の受講が3年ごとに必要!

予防技術者検定にチャレンジ! 消防設備士編

~消防用設備 予想問題と解説~ 問題1

次の消防用設備を新たに設置する場合、消防設備士の資格が無くても工事できるものはどれか1つ選べ。

  1. 移動式粉末消火設備
  2. 自動火災報知設備
  3. ガス漏れ火災警報設備
  4. 吊り下げ式避難はしご
クリックして答え合わせをする。
答え 4.吊り下げ式避難はしご 移動式粉末消火設備であっても消防設備士の独占業務に該当するため注意が必要です。避難器具の中でも金属製避難はしごは固定式のものだけが消防設備士の独占業務に該当する点に注意しましょう!
~消防用設備 予想問題と解説~ 問題2

次の消防用設備のうち、消防法第17条の14に基づく着工届が必要なものはどれか一つ選択せよ。

  1. 自動火災報知設備の電源部分に係る工事
  2. 屋内消火栓の水源部分に係る工事
  3. 移動式粉末消火設備の設置に係る工事
  4. 避難器具(滑り台)の設置に係る工事
クリックして答え合わせをする。
答え(3) 自動火災報知設備の電源部分に係る工事については電源部分に係る工事は対象外であるため誤り。屋内消火栓の水源部分に係る工事については水源部分に係る工事は対象外であるため誤り。避難器具(滑り台)の設置に係る工事については、避難器具で対象となるのは金属製避難梯子(固定式)、救助袋、緩降機のみであり、滑り台はそもそも対象外となるため誤り。

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