避難上有効な開口部と手すりの高さ、消防法と建築基準法の関係性

バルコニーと手すり 建築基準法関係

「無窓階になると消防法令の規制が強くなるから有窓階を前提に設計がしたいです。注意点を教えて下さい!」って設計者が多いけど消防法の基準だけ知ってればいいのかな?

特殊建築物のような用途でなければ手すりの高さの基準が無いって本当?

消防無窓階になると、消防隊の活動が困難になることから、火災の発見から周知の早期化、初期消火能力の増大と設備規制が強くなりますよね。具体的には飲食店では無窓階100㎡で自動火災報知設備の設置や150㎡で屋内消火栓の設置が義務付けられています。設備投資が大きくなるとランニングコストも必然的に大きくなってしまうため、設計者は消防用設備等の設置が少なくて済むように無窓階を回避するように設計することが多いです。

そんな無窓階についても開口部の大きさ等が定められていますが、開口部が大きければ良いという安易な話ではありません。

消防隊の目線ではバルコニーから進入する際は開口部が大きく手すりの高さが低い方が活動が有利となりますよね。しかし建築基準法による生活者の目線ではバルコニーの手すりの高さが低いと誤って転落していまう可能性があるため、安全性に問題があると感じます。

今回は消防法に基づく無窓階の考え方についてと建築基準法に基づく手すりの設計について分かり易く解説します。その結果、上記のような疑問も解決できます。

無窓階という概念が初めて出てくる法令文は?

無窓階判定は消防活動のため

消防法令で初めて無窓階の話が出てくる法令文はどこか分かりますか? 実は消火器の設置基準である令第10条で初登場しています。

余談になりますが、地階と無窓階は全く別の考え方であるため分けて考えて下さいね。地階でも無窓階とならないような開口部があるパターンで、たまに混同する職員もいました(汗) 

無窓階の前提は「建築物の地上階のうち」ですね!

消防法施行令第10条

消火器又は簡易消火用具(以下「消火器具」という。)は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。

五 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる建築物の地階(地下建築物にあつては、その各階をいう。以下同じ。)、無窓階(建築物の地上階のうち、総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階をいう。以下同じ。)又は三階以上の階で、床面積が五十平方メートル以上のもの

普通階と無窓階の考え方を解説!

無窓階判定の条件の1つ:50cm円の内接

普通階とは?

まずは普通階の考え方をお伝えします。普通階とは「直径50センチメートル以上の円が内接することができる開口部の面積の合計が当該階の床面積の30分の1を超える階」とされています。そしてその開口部には次の4つの条件があります。

  1. 床面から開口部の下端までの高さは、1.2メートル以内であること。
  2. 開口部は、道又は道に通ずる幅員1メートル以上の通路その他の空地に面したものであること。
  3. 開口部は、格子その他の内部から容易に避難することを妨げる構造を有しないものであり、かつ、外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるものであること。
  4. 開口部は、開口のため常時良好な状態に維持されているものであること。

この4つの条件を適用しようとすると、敷地境界のコンクリート塀に近接している面の開口部や排煙窓等は普通階とするための開口部にはならないことが分かりますね。

そうそう、1.2m以内というのは屋内側ですよ。屋外側は3連はしごを掛けることを考えるとイメージしやすいですね。

規則第五条の二(避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階)

令第十条第一項第五号の総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階は、十一階以上の階にあつては直径五十センチメートル以上の円が内接することができる開口部の面積の合計が当該階の床面積の三十分の一を超える階(以下「普通階」という。)以外の階、十階以下の階にあつては直径一メートル以上の円が内接することができる開口部又はその幅及び高さがそれぞれ七十五センチメートル以上及び一・二メートル以上の開口部を二以上有する普通階以外の階とする。

2 前項の開口部は、次の各号(十一階以上の階の開口部にあつては、第二号を除く。)に適合するものでなければならない。

 一 床面から開口部の下端までの高さは、一・二メートル以内であること。

 二 開口部は、道又は道に通ずる幅員一メートル以上の通路その他の空地に面したものであること。

 三 開口部は、格子その他の内部から容易に避難することを妨げる構造を有しないものであり、かつ、外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるものであること。

  四 開口部は、開口のため常時良好な状態に維持されているものであること。

1階~10階の無窓階の考え方を解説!

無窓階とならないためには大開口と呼ばれる直径1m以上の円が内接することができる開口部又はその幅及び高さがそれぞれ75cm以上及1.2以上の開口部を2以上有することが必用です。

1階から10階は 大開口2カ所 + 普通階 が無窓階とならない条件ですね。

11階以上の階の無窓階の考え方を解説!

11階以上は非常にシンプルであり、普通階であることが無窓階とならない条件になります。これだけの階層になると屋外からの進入が容易でないことから大開口を求めていないのでしょうかね。

11階以上は 普通階 が無窓階とならない条件

建築基準法で求められる手すり等の高さ

建築基準法ではバルコニー等に設ける手すりの高さが定められていますが大前提があります。その大前提は建築基準法施行令第117条に定められており特殊建築物や3階建て以上のような条件が挙げられます。つまり木造2階建ての事務所ではそもそも建築基準法令による手すりの高さの基準が適用されない可能性もあるため大前提を理解してから読み進めて下さい。

  • 法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物
  • 階数が三以上である建築物
  • 採光上の無窓の居室を有する階
  • 延べ面積が千平方メートルをこえる建築物
建築基準法施行令第百十七条 第二節 廊下、避難階段及び出入口 (適用の範囲)

この節の規定は、法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、前条第一項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室を有する階又は延べ面積が千平方メートルをこえる建築物に限り適用する。

建築基準法施行令第百十六条の二

一 面積(第二十条の規定より計算した採光に有効な部分の面積に限る。)の合計が、当該居室の床面積の二十分の一以上のもの

建築基準法施行令第126条により手すりの高さは1.1m以上が必用

ここまでの消防法での無窓階の基準については知っていましたよね。ここからは消防活動ではなく在館者の安全の話になります。

建築基準法施行令第126条では2階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが1.1メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならないとされています。

建築基準法施行令第百二十六条(屋上広場等)

屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。

まとめ

無窓階についてと建築基準法令による手すりの高さについては理解できましたか? 

消防法令では1.2m以下建築基準法令では1.1m以上と両者の違いがあることを知っているか知っていないかで指導できる範囲も変わってきますね。バルコニーの手すりの高さを変更して無窓階になった防火対象物があったときは両方の基準を説明し、1.1m以上1.2m以下へと指導して下さいね。

予防技術検定にチャレンジ! 消防無窓編

予想問題

次の無窓階の記述について( ア )及び( イ )の空欄にあてはまる語句の正しい組み合わせを答えよ。

 令第十条第一項第五号の総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階は、十一階以上の階にあつては直径( ア )が内接することができる開口部の面積の合計が当該階の床面積の( イ )階(以下「普通階」という。)以外の階、十階以下の階にあつては直径一メートル以上の円が内接することができる開口部又はその幅及び高さがそれぞれ七十五センチメートル以上及び一・二メートル以上の開口部を二以上有する普通階以外の階とする。

  1. (ア)五十センチメートル以上の円 (イ)三十分の一以上の階
  2. (ア)五十センチメートル以上の円 (イ)三十分の一を超える階
  3. (ア)五十センチメートルを超える円 (イ)三十分の一以上の階
  4. (ア)五十センチメートルを超える円 (イ)三十分の一を超える階
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答え 2 令第十条第一項第五号の総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階は、十一階以上の階にあつては直径(ア 五十センチメートル以上の円)が内接することができる開口部の面積の合計が当該階の床面積の(イ 三十分の一を超える階)(以下「普通階」という。)以外の階、十階以下の階にあつては直径一メートル以上の円が内接することができる開口部又はその幅及び高さがそれぞれ七十五センチメートル以上及び一・二メートル以上の開口部を二以上有する普通階以外の階とする。

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