消防法施行令第9条の適用除外は難しい!? 消防用設備ごとの適用条項を分かり易く解説

防火服を脱ぐ女性消防士 消防用設備等

複合用途の場合の消防用設備等の設置規制って難しい!

消防法施行令第9条の適用とか適用除外ってなに?

この記事では消防法施行令第9条の複合用途での消防用設備等の規制方法を解説し、上記のような疑問を解決します。

消防法施行令第9条とは何か 複合用途は原則用途ごとに規制!

令9条が適用される例(それぞれの用途が1の防火対象物)

消防法施行令第9条では16項の複合用途防火対象物の各用途部分は基本的にはそれぞれの単項用途で規制することを原則としています。

令9適用と言えばそれぞれの防火対象物の用途部分ごとに規制するものです。しかし、この令9条には適用を除外する条項が定められており、その除外する条項に該当すれば建物全体に16項イとしての設備規制がなされます。令9条は難解ですが順序だてて法文を解説します。

消防法施行令第9条

別表第一(十六)項に掲げる防火対象物の部分で、同表各項((十六)項から(二十)項までを除く。)の防火対象物の用途のいずれかに該当する用途に供されるものは、この節(第十二条第一項第三号及び第十号から第十二号まで、第二十一条第一項第三号、第七号、第十号及び第十四号、第二十一条の二第一項第五号、第二十二条第一項第六号及び第七号、第二十四条第二項第二号並びに第三項第二号及び第三号、第二十五条第一項第五号並びに第二十六条を除く。)の規定の適用については、当該用途に供される一の防火対象物とみなす。

令9条の適用から除外される条項 16項イや16項ロとして規制

令9条適用から除外される消防用設備等はスプリンクラー設備、自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報器、非常警報設備、避難器具、誘導灯ですが一定の条項に限られています。この適用除外を受ける条項に該当した場合は16項としての規制を受けます。

令9条の適用が除外される条項の考え方(それぞれの用途では無く16項として規制)

ついつい設備名称で覚えてしまいそうになりますが、実務では必ず法文を確認するようにしましょう。すこし長いですが抜粋していきます。

スプリンクラー設備

スプリンクラー設備は第十二条第一項第三号及び第十号から第十二号までが除外されています。

除かれている条項は簡単に纏めると次のものです。

  • 16項イで階数が11以上のもの(防火対象物全体を規制)
  • 16項イの特定用途部分の合計が3000㎡以上であり、特定用途の存する階(防火対象物全体を規制するが設置対象は階ごと)
  • 16項イの地階又は無窓階でその階の特定用途部分の面積が1000㎡以上のもの(階単位での規制)
  • 16項イの4~10階でその階の特定用途部分の面積が1500㎡以上(2項、4項の存する階は1000㎡以上)のもの(階単位での規制)
  • 16項イでも16項ロでも11階以上の階(階単位での規制)

上記、適用除外に該当しなければそれぞれの用途ごとに規制されるため、0㎡から設置義務の生じる6項ロでは部分だけの義務が生じる可能性がありますね。

令9条が適用され6項ロ部分での規制がされる複合用途の例(スプリンクラー設備)
第十二条 スプリンクラー設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。

三 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ及び(十六)項イに掲げる防火対象物で、地階を除く階数が十一以上のもの(総務省令で定める部分を除く。)

十 別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物(第三号に掲げるものを除く。)で、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分(総務省令で定める部分を除く。)の床面積の合計が三千平方メートル以上のものの階のうち、当該部分が存する階

十一 前各号に掲げる防火対象物又はその部分以外の別表第一に掲げる防火対象物の地階、無窓階又は四階以上十階以下の階(総務省令で定める部分を除く。)で、次に掲げるもの

 イ 別表第一(一)項、(三)項、(五)項イ、(六)項及び(九)項イに掲げる防火対象物の階で、その床面積が、地階又は無窓階にあつては千平方メートル以上、四階以上十階以下の階にあつては千五百平方メートル以上のもの

 ロ 別表第一(二)項及び(四)項に掲げる防火対象物の階で、その床面積が千平方メートル以上のもの

 ハ 別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物の階のうち、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存する階で、当該部分の床面積が、地階又は無窓階にあつては千平方メートル以上、四階以上十階以下の階にあつては千五百平方メートル(同表(二)項又は(四)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分が存する階にあつては、千平方メートル)以上のもの

十二 前各号に掲げる防火対象物又はその部分以外の別表第一に掲げる防火対象物の十一階以上の階(総務省令で定める部分を除く。)

自動火災報知設備

自動火災報知設備は第二十一条第一項第三号、第七号、第十号及び第十四号までが除外されています。

除かれている条項は簡単に纏めると次のものです。

  • 16項イで、16の2項で300㎡以上(防火対象物全体を規制)
  • 特定1階段等防火対象物(防火対象物全体を規制)
  • 16項イで2項又は3項の用途に供する無窓階が100㎡以上(階単位での規制)
  • 16項イでも16項ロでも11階以上の階(階単位での規制)

第二十一条 自動火災報知設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。

三 次に掲げる防火対象物で、延べ面積が三百平方メートル以上のもの

 イ 別表第一(一)項、(二)項イからハまで、(三)項、(四)項、(六)項イ(4)及びニ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物

 ロ 別表第一(六)項ハに掲げる防火対象物(利用者を入居させ、又は宿泊させるものを除く。)

七 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる防火対象物のうち、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階以外の階に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段が二(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあつては、一)以上設けられていないもの 特定1階段等防火対象物

十 別表第一(二)項イからハまで、(三)項及び(十六)項イに掲げる防火対象物(第三号、第七号及び第八号に掲げるものを除く。)の地階又は無窓階(同表(十六)項イに掲げる防火対象物の地階又は無窓階にあつては、同表(二)項又は(三)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものに限る。)で、床面積が百平方メートル(同表(十六)項イに掲げる防火対象物の地階又は無窓階にあつては、当該用途に供される部分の床面積の合計が百平方メートル)以上のもの

十四 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物の十一階以上の階

ガス漏れ火災警報設備

ガス漏れ火災警報設備は第二十一条の二第一項第五号が除外されています。

第二十一条の二 ガス漏れ火災警報設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分(総務省令で定めるものを除く。)に設置するものとする。

五 別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物(第三号に掲げるものを除く。)の地階のうち、床面積の合計が千平方メートル以上で、かつ、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積の合計が五百平方メートル以上のもの

漏電火災警報器

漏電火災警報器は第二十二条第一項第六号及び第七号が除外されています。

第二十二条 漏電火災警報器は、次に掲げる防火対象物で、間柱若しくは下地を準不燃材料(建築基準法施行令第一条第五号に規定する準不燃材料をいう。以下この項において同じ。)以外の材料で造つた鉄網入りの壁、根太若しくは下地を準不燃材料以外の材料で造つた鉄網入りの床又は天井野縁若しくは下地を準不燃材料以外の材料で造つた鉄網入りの天井を有するものに設置するものとする。

六 別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物のうち、延べ面積が五百平方メートル以上で、かつ、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積の合計が三百平方メートル以上のもの

七 前各号に掲げるもののほか、別表第一(一)項から(六)項まで、(十五)項及び(十六)項に掲げる建築物で、当該建築物における契約電流容量(同一建築物で契約種別の異なる電気が供給されているものにあつては、そのうちの最大契約電流容量)が五十アンペアを超えるもの

非常警報設備

非常警報設備は第二十四条第二項第二号並びに第三項第二号及び第三号が除外されています。

2 非常ベル、自動式サイレン又は放送設備は、次に掲げる防火対象物(次項の適用を受けるものを除く。)に設置するものとする。ただし、これらの防火対象物に自動火災報知設備が第二十一条に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置されているときは、当該設備の有効範囲内の部分については、この限りでない。

二 前号に掲げる防火対象物以外の別表第一(一)項から(十七)項までに掲げる防火対象物で、収容人員が五十人以上のもの又は地階及び無窓階の収容人員が二十人以上のもの

3 非常ベル及び放送設備又は自動式サイレン及び放送設備は、次に掲げる防火対象物に設置するものとする。

二 別表第一に掲げる防火対象物(前号に掲げるものを除く。)で、地階を除く階数が十一以上のもの又は地階の階数が三以上のもの

三 別表第一(十六)項イに掲げる防火対象物で、収容人員が五百人以上のもの

避難器具

避難器具は第二十五条第一項第五号が除外されています。

第二十五条 避難器具は、次に掲げる防火対象物の階(避難階及び十一階以上の階を除く。)に設置するものとする。

五 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物の三階(同表(二)項及び(三)項に掲げる防火対象物並びに同表(十六)項イに掲げる防火対象物で二階に同表(二)項又は(三)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものにあつては、二階)以上の階のうち、当該階(当該階に総務省令で定める避難上有効な開口部を有しない壁で区画されている部分が存する場合にあつては、その区画された部分)から避難階又は地上に直通する階段が二以上設けられていない階で、収容人員が十人以上のもの 1階段

誘導灯

誘導灯は第二十六条自体が全て除外されています。

第二十六条 誘導灯及び誘導標識は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める防火対象物又はその部分に設置するものとする。ただし、避難が容易であると認められるもので総務省令で定めるものについては、この限りでない。

 一 避難口誘導灯 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物並びに同表(五)項ロ、(七)項、(八)項、(十)項から(十五)項まで及び(十六)項ロに掲げる防火対象物の地階、無窓階及び十一階以上の部分

 二 通路誘導灯 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物並びに同表(五)項ロ、(七)項、(八)項、(十)項から(十五)項まで及び(十六)項ロに掲げる防火対象物の地階、無窓階及び十一階以上の部分

 三 客席誘導灯 別表第一(一)項に掲げる防火対象物並びに同表(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物の部分で、同表(一)項に掲げる防火対象物の用途に供されるもの

 四 誘導標識 別表第一(一)項から(十六)項までに掲げる防火対象物

3 第一項第四号に掲げる防火対象物又はその部分に避難口誘導灯又は通路誘導灯を前項に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置したときは、第一項の規定にかかわらず、これらの誘導灯の有効範囲内の部分について誘導標識を設置しないことができる。

おわりに

誘導灯は16項イは令9条が適用除外されすべて必用

消防法施行令第9条の適用除外については慣れるまではすごく難解ですね。私自身、消防同意の審査員をしていた頃は毎年新しい消防基本6法に令9条の適用除外をラインマーカーをチェックしていました。消防基本6法で行ったり来たりを繰り返すと混乱しがちですので、このページを印刷して令9のページに挟んで活用してください。

令9条適用除外の判断のコツは法令文をちゃんと読むことから始まります。非常に難解に思う事も多いですが何度も繰り返し読むうちに自信のスキルとして定着しますよ。

予防技術検定にチャレンジ! 令9適用編

予想問題

別表第一(十六)項に掲げる防火対象物の部分で、同表各項((十六)項から(二十)項までを除く。)の防火対象物の用途のいずれかに該当する用途に供されるものについて、施行令9条の適用を受けず、防火対象物全体に規制が係る条文について誤っているものを1つ選べ。

  1. スプリンクラー設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。別表第一(六)項イ(1)及び(2)に掲げる防火対象物で、火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するもの以外のもの 。
  2. 自動火災報知設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階以外の階に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段が二(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあつては、一)以上設けられていないもの。
  3. 非常ベル及び放送設備又は自動式サイレン及び放送設備は、次に掲げる防火対象物に設置するものとする。 別表第一に掲げる防火対象物(前号に掲げるものを除く。)で、地階を除く階数が十一以上のもの又は地階の階数が三以上のもの
  4. 避難器具は、次に掲げる防火対象物の階(避難階及び十一階以上の階を除く。)に設置するものとする。別表第一に掲げる防火対象物の三階(同表(二)項及び(三)項に掲げる防火対象物並びに同表(十六)項イに掲げる防火対象物で二階に同表(二)項又は(三)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものにあつては、二階)以上の階のうち、当該階(当該階に総務省令で定める避難上有効な開口部を有しない壁で区画されている部分が存する場合にあつては、その区画された部分)から避難階又は地上に直通する階段が二以上設けられていない階で、収容人員が十人以上のもの
クリックして答え合わせをする。
答え 1 防火対象部全体に規制は及ばない。

自信が付いたら予防技術検定にチャレンジしよう!

コメント

タイトルとURLをコピーしました