消防法17条の3の3について、設備の点検結果の報告のタイミングはいつなの?
点検って自分でしてもいいの?それともプロに頼む必要があるの?
そもそも点検報告の対象は存在するの?
「点検報告しなさいって」消防に指摘されたけど無視し続けたらどうなるの?
この記事では消防法第17条の3の3に基づく点検報告制度について、自身で点検しても良いのか、いつ報告するのかについて解説し、上記のような疑問を解決します。
消防用設備等の点検報告制度 「定期報告」の定期ってどれぐらいの時期?
消防法第17条の3の3では消防設備等を定期に点検し、用途に応じて定期的に消防機関へ報告することが定められています。この点検報告制度では点検のプロに任せなければいけないのか、何年ごとに報告しなければならないのか、そもそも何を点検するのか等様々な疑問があると思います。まずは点検の報告時期について解説します。
特定用途は毎年、非特定用途は3年に1回の報告義務
消防法施行規則第三十一条の六では点検実施の期間と用途に応じた報告時期が定められています。報告時期について簡単に纏めると、特定用途は1年に1回以上、非特定用途は3年に1回以上の報告が求められています。
しかし、この消防用設備等の点検報告率がどうも良くない様で、最近消防庁は対策をしてきました。郵送による報告を全面的に認め、少しでも報告率を上げようと改正されていますよ。
それでは報告時期を法文で確認しましょう!
点検の頻度 機器点検と総合点検について
【種類及び点検内容に応じて、一年以内で消防庁長官が定める期間ごとに行うものとする】とは平成16年5月31日消防庁告示第9号を指しています。
機器点検は半年、総合点検は1年の点検の期間として定められています。
消火器と誘導灯しか設置されていないような小規模な飲食店等を例にすると、消火器と誘導灯は半年ごとの機器点検は必用ですが、総合点検はありません。しかし、誘導灯には配線が配置されるため配線部分は総合点検の対象になります。消防機関への報告は総合点検を実施したタイミングのものを1年に1回以上報告します。
最近では31年4月18日に自家発の点検について改正がありましたので、そちらも含めて確認してみて下さい。
消防法施行規則の規定に基づき、消防用設備等又は特殊消防用設備 等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法並びに 点検の結果についての報告書の様式を定める件
(平成16年5月31日)
(消防庁告示第9号)
改正 平成18年7月 3日消防庁告示第32号
同 21年2月26日同 第 2号
同 21年9月15日同 第18号
同 22年2月 5日同 第 4号
同 26年4月14日同 第14号
同 30年3月29日同 第 6号
同 31年4月18日同 第 6号
消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第31条の6第1項及び第4項の規定に基 づき、消防用設備等又は特殊消防用設備等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法並びに点検の結果についての報告書の様式を次のとおり定める。
第1 用語の定義
この告示において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところに よる。
1 点検 消防用設備等にあっては消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」とい う。)第17条第1項の技術上の基準に、特殊消防用設備等にあっては同条第3項の設 備等設置維持計画に適合しているかどうかを確認することをいう。
2 消防用設備等の種類等 消防用設備等(非常電源、配線及び総合操作盤の部分を除く。 ) の種類及び非常電源の種別並びに配線及び総合操作盤の別をいう。
3 消防用設備等の機器 消防用設備等のヘッド、感知器、加圧送水装置、配管等の機器 をいう。
第2 点検の内容及び点検の方法 点検の内容及び点検の方法は、次のとおりとする。ただし、特殊消防用設備等にあって は、法第17条第3項に規定する設備等設置維持計画によるものとする。
1 機器点検 次の事項について、消防用設備等の種類等に応じ、別に告示で定める基準 に従い確認すること。
(1) 消防用設備等に附置される非常電源(自家発電設備に限る。)又は動力消防ポンプ の正常な作動
(2) 消防用設備等の機器の適正な配置、損傷等の有無その他主として外観から判別で きる事項
(3) 消防用設備等の機能について、外観から又は簡易な操作により判別できる事項
2 総合点検 消防用設備等の全部若しくは一部を作動させ、又は当該消防用設備等を使用することにより、当該消防用設備等の総合的な機能を消防用設備等の種類等に応じ、別に告示で定める基準に従い確認すること。
第3 点検の期間 点検の期間は、次の表の上欄(左欄)に掲げる消防用設備等の種類等並びに同表中欄に掲げる点検の内容及び方法に応じ、同表下欄(右欄)に掲げるとおりとする。ただし、特殊消防用設備等にあっては、法第17条第3項に規定する設備等設置維持計画に定める期間によるものとする。
消防用設備等の点検はプロに任せなければいけないのか?
消防法第17条の3の3に定められるように、政令で定めるものは有資格者の点検が必用になり、それ以外は自身での自主点検でも可能としています。
有資格者という点検のプロは「消防設備士」か「消防設備点検資格者」を指します。
消防法第17条の3の3 一部抜粋
(前略)当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、(後略)
有資格者に点検させる必要がある対象物を簡単にまとめると下表のようになります。1000㎡がひとつの基準となっていますが、特定1階段等防火対象物は必ず有資格者の点検が要ります。
下表よりも小規模な防火対象物は有資格者に点検させる必要は無く、自身で点検することができます。でも、報告義務は小規模でも緩和されませんよ!
用途 | 面積等の条件 |
特定用途 | 1000㎡以上 |
非特定用途 | 1000㎡以上+消防長又は消防署長の指定 |
特定1階段等防火対象物 | 面積等の条件無し |
筆者の個人的な意見としては、いくら自主点検が法令上可能であったとしても、あまりお勧めしません。小規模であったとしても点検を疎かにすると重大な事故に繋がる可能性はおおいにあります。設置から経過年数の浅い消火器や誘導標識以外の消防用設備はプロの知識技術をもって対応していただくことを強くお勧めします。
屋外キュービクル変電設備や自動車に設置される消火器も点検報告制度の対象なのか?
屋外のキュービクル変電設備に設置されている消火器って消防法17条の3の3に基づく点検報告って必要なんでしょうか?
すべての消火器は点検報告する必要があるように感じますが実は違います。消防法17条の3の3で対象とされているのは消防法17条第1項の消防用設備等になります。
点検報告制度の内容からは少し脱線しますが、消火器の設置要否について見てみましょう。
消防法第17条第1項の規制対象となるのか? 消火器を例に解説!
消火器の設置の要否は消防法施行令第10条第1項に記載されています。法文を見ると分かる通り基本的には用途と面積で決定します。4号だけは特別で少量危険物や指定可燃物の貯蔵取扱所です。
電気室や火器使用室に対する負荷条件は規則第6条に記載されていますが、あくまで消防法施行令第10条第1項で消火器が必要な場合に限ります。
よって屋外に設置されるキュービクル変電は単体で見た場合、消防法令では消火器の設置義務がでは生じていないため点検報告の対象にもなりません。
しかし消防法令では点検報告義務がなくとも、点検することをオススメしますよ。法律は最低基準であり、いざという時消火器が使えなかったら意味が無いですもんね!
設備点検未報告への違反処理に関する3つの選択肢
消防設備等の点検結果報告書を提出しない違反者への対処法は3つの手法があることを知っていますか?
点検の実施状況や防火管理者の選任状況により次のように分ける事ができます。
1.点検はしているけども報告してこない
→消防法第4条に基づく資料提出命令
2.防火管理者が選任されている防火対象物で、そもそも点検をしていない
→消防法第8条第4項に基づく防火管理業務適正執行命令
3.上記以外
→告発を前提
どれもが2次措置としての内容になりますので、まずは警告を実施します。しかし全国的な点検報告率が芳しくない状況を考えると、警察比例の原則により告発という選択肢はほぼ無いですね(汗)
現実的なラインとしては他の違反内容と並行して資料提出命令や防火管理業務適正執行命令を実施することになりそうですが、特定1階段や1000㎡以上でプロによる点検が必要な防火対象物は特に消防用設備等の重要性が高いため速やかに警告を実施し、2つの命令を視野に入れましょう!
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