消防法3条に定められる措置命令、略式の代執行、代執行について法解釈から実務までを徹底解説!

査察、違反処理実務

消防法第3条の命令って屋外限定だよね。

でも、屋外での火災の予防とか消防活動の障害除去ってあんまりイメージ湧かないなぁ。命令権者や命令内容の具体例が知りたい!

物件について3号と4号の違いはなに?

略式の代執行って何が略式なの?

代執行や略式の代執行の実務を教えて!

消防法第3条は3つの命令が定められていることを知っていますか?

第1項の措置命令、第2項の略式の代執行、第4項の代執行の3つです。この記事ではそれぞれの命令について実務のポイントや注意点、さらには第3号と第4号の物品の違いについて解説します。

その結果、消防法第3条への理解が深まり、上記のような疑問にお答えします。

消防法第3条には3つの命令がある!? でもどの命令を選択するの?

消防法第3条の屋外における火災の予防又は消防活動の障害除去のための措置命令等については3つの命令に分かれていることを、あなたは知っていますか?

  • 第1項 措置命令
  • 第2項 略式の代執行
  • 第4項 代執行

これらの3つの命令の使い分けはズバリ〈受命者〉がポイントになります。

屋外において火災予防上危険な物件や消防活動上支障になる物件があればまずその物件について権原を有する者を特定する必要があります。

消防法第3条ではそれら物件の所有者、管理者、占有者で権原を有する者が〈受命者〉となりますが、受命者を確定できるかどうかで命令のルートが変わってきます。

  • 受命者が確定する場合  第1項の措置命令、第4項の代執行が対象
  • 受命者が確定しない場合 第2項の略式の代執行が対象

それでは各命令について深掘りしていきます!

消防法第3条第1項の屋外における措置命令!受命者が確定している状態の最初の命令はコレを選択! 

消防法第3条第1項の措置命令では「火災の予防」の観点と、「消防活動上」の観点から命令を行います。これらの観点は後で解説するとして、消防法第3条第1項命令を選択する中での最大のポイントは次の2点です。

  • 消防吏員でも命令できる!
  • 受命者が誰であるか確定している!

「誰が誰に命令するのか」というポイントが確実に押さえられている必用があります。

火災の予防の観点の具体例

乾燥注意報や火災注意報発令時に屋外で大規模な野焼きに対し行為を禁止や制限すること

消防活動上の観点の具体例

連結送水管や連結散水設備の送水口前にホース接続の障害となるような物件が存置されている場合に、その物件の除去、移動を命じること

消防活動上の観点について、その対象となるのは公設消防の活動に支障となる場合に限られず、防火対象物の関係者の消火や避難の活動も含みます。

第1項の命令権を有する者は消防吏員を含む!

第3条各項の中で唯一消防吏員に命令権が与えられているのが、この第1項の措置命令です。

命令権者は消防長、消防署長その他の消防吏員となっており、採用1年目の新人消防士であっても命令することが可能です。

受付のみの事務職員は消防職員であっても消防吏員ではありませんよね。注意点としては消防職員では無く消防吏員に限定される点です。

実務上は立入検査でも現場活動でも2名以上の小隊で動くことが多いです。その場合、命令発動は隊長名(その隊の最高責任者)で実施することが望ましいです。

措置命令の受命者は必ず確定させる必要がある

受命者は行為者又物件の所有者、管理者若しくは占有者で権原を有する者です。第1項命令を発動させるためには必ずココを確定させる必要があります。

受命者と措置内容についての概要や繋がりは以下の通りです。

行為者への内容
  • 火遊び、喫煙、たき火、火を使用する設備等の使用その他これらに類する行為の禁止、若しくは制限又はこれらの行為を行う場合の消火準備
  • 残火、取灰又は火粉の始末

物件の所有者等への命令
  • 火災予防上危険な物件の除去その他の処理
  • 消火、避難その他の消防の活動に支障な物件の整理又は除去

物件について考えると、受命者は「火災の予防に危険であると認める物件若しくは消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める物件の所有者、管理者若しくは占有者で権原を有する者」とされています。

簡単にまとめると邪魔な物件についてその人の権限で動かせる人です。例えば連結送水管の送水口前に自転車が放置されていた場合、その自転車の所有者は受命者となります。

物件について3号と4号の違いって何?

さて、ここで新たな疑問です。連結送水管の送水口前に放置された自転車は火災の予防上危険な物件ですか?それとも消防活動上支障になる物件ですか? 

こう聞かれたら誰もが後者であることが分かりますよね。

命令の根拠は「火災の予防上危険」であるか「消防活動上支障がある」かを判断しますが、燃える燃えないかで3号4号に分かれています。

第三号 危険物又は放置され、若しくはみだりに存置された燃焼のおそれのある物件の除去その他の処理
第四号 放置され、又はみだりに存置された物件(前号の物件を除く。)の整理又は除去

端的に言えば3号は燃える物件、放火される危険性を有しているため火災予防上危険な物件4号は燃えないけど邪魔な物件、それも消防活動上支障になる物件、というロジックです。

例えば、不燃性のロッカーが連結送水管の送水口前に置かれ、消防活動の支障になると判断した場合は根拠となるのは4号のみですね。

集積単位を超えて大量の指定可燃物が集められている場合は3号の命令対象です。だって放火された場合、一カ所で爆発的に燃焼してしまうため〈火災の予防に危険であると認める物件〉ですよね。

燃える物件燃えないけど邪魔な物件が混在する場合は3号及び4号を併記して命令します。

命令の実務 具体的な命令の伝え方はどう言ったらいいの?

命令するときは〈誰が〉〈誰に〉〈何を〉〈いつまでに〉〈どのようにするのか〉をハッキリと伝えます! 相手を上手く説得させるには〈なぜか〉を最初に伝えると有効的ですよ。

よく5W1Hを意識して説明するようにと言われますね。

先ほどの連結送水管の送水口前に自転車が放置されていた場合の例だとこうです!

現在、連結送水管の前にあなたの所有する自転車が存置されています。この建物の高層階で火災が起こった場合、消防隊はこの連結送水管を用いて消火活動を行います。送水口前に自転車が放置されている現在の状態では、火災発生時に連結送水管を活用できず消火活動が遅れる可能性があり危険な状態となっています。

よって、令和〇年〇月〇日〇時○分に消防指令(階級)あっちゃん(命令者名)が自転車の所有者である〇〇さんに対し消防法第3条第1項に基づき、〇時〇分までに物件を除去することを命じます。

後半の5Wの部分は基本的には定型文となりますが、こだわる分部は前半の1Hです!

私は3段論法を用いる事を意識していました。3段論法とはAならばB、BならばC、だからAはCと本題を伝えるためにワンクッション置く手法です。3段論法の様に情報を迂回することで、そのロジックが正しいと認識させ易くなります。

先ほどの例だと結論は「自転車が連送の送水口前に放置された状態は危険!」となりますよね。でもあえて消防隊の活動といった情報を迂回させています。迂回させる情報は2以上でも問題ありません。

消防法第3条第1項の法文を確認!

これまでの解説を整理するためにも法令文を読み返して下さい。

消防法第3条第1項

消防長(消防本部を置かない市町村においては、市町村長。第六章及び第三十五条の三の二を除き、以下同じ。)、消防署長その他の消防吏員は、屋外において火災の予防に危険であると認める行為者又は火災の予防に危険であると認める物件若しくは消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める物件の所有者、管理者若しくは占有者で権原を有する者に対して、次に掲げる必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

一 火遊び、喫煙、たき火、火を使用する設備若しくは器具(物件に限る。)又はその使用に際し火災の発生のおそれのある設備若しくは器具(物件に限る。)の使用その他これらに類する行為の禁止、停止若しくは制限又はこれらの行為を行う場合の消火準備

二 残火、取灰又は火粉の始末

三 危険物又は放置され、若しくはみだりに存置された燃焼のおそれのある物件の除去その他の処理

四 放置され、又はみだりに存置された物件(前号の物件を除く。)の整理又は除去

電子政府の総合窓口 e-Govより法令文引用

受命者が確定しない!? ならば、消防法第3条第2項の略式の代執行で危険を排除!

「この自転車をすぐに撤去して下さい!」

「えっ、僕のじゃないし何の関係もないですよ(汗)。誰の自転車かも知りません…」

と言われても諦めない!

受命者が確知できない場合には略式の代執行が定められています。

参考ですが、「確知」とは、名あて人が現場に居合わせる場合等、氏名及び住所を知ることができる場合に限らず、その者を特定することのできる場合全般をさします。

略式の代執行の「略式」って何のこと? その疑問を解説!

略式の代執行についてまず思うことは「何が略式!?」ですよね。

命令の大前提として命令権者と受命者が定められていることは法令の一般的なルールです。しかし、屋外では危険な物件が誰のものであるかを判断できないことが考えられます。でも、危険な物件を放置し続けることは行政として望ましくないため、略式の代執行により、消防職員に物件を除去させることが可能な訳です。

略式の代執行とは、行政代執行法に基づく正式の代執行において行われる「戒告及び代執行令書による通知の手続」を省略した手続です。ここが略式という訳ですね。

余談ですが、消防法第5条の3にも略式の代執行が認められていますが、3条第2項命令と異なり、緊急性がそれほど高くない場合は相当の期限を定めて、公告を行うことが必用ですね。混同しないように注意しましょう!

命令権を有する者に消防吏員は含まれない! 措置内容について解説!

略式の代執行を行う権利を有しているのは消防長又は消防署長に限定されています。

第1項では消防吏員が含まれていましたが、略式の代執行に消防吏員は含まれていません。

措置内容は第1項第3号又は第4号の物件の除去を消防職員に実施させることです。しかし、勝手に物件を移動させてしまうため、それらを保管する必要がありますね。そこで登場するのが災害対策基本法の読み替えです。

消防法第3条第2項

消防長又は消防署長は、火災の予防に危険であると認める物件又は消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める物件の所有者、管理者又は占有者で権原を有するものを確知することができないため、これらの者に対し、前項の規定による必要な措置をとるべきことを命ずることができないときは、それらの者の負担において、当該消防職員(消防本部を置かない市町村においては、消防団員。第四項(第五条第二項及び第五条の三第五項において準用する場合を含む。)及び第五条の三第二項において同じ。)に、当該物件について前項第三号又は第四号に掲げる措置をとらせることができる。この場合において、物件を除去させたときは、消防長又は消防署長は、当該物件を保管しなければならない。

電子政府の総合窓口 e-Govより法令文引用

物品の保管は災害対策基本法を準用する!

保管方法等については第3項に定められており災害対策基本法を準用するとされています。

保管後の流れは次のようになっています。

保管を開始したらまず最初に消防署でその旨を掲示し公示します。公示の内容は次のとおりです。

  • 物件の名称又は種類、形状及び数量
  • 保管した物件の所在した場所及びその物件を除去した日時
  • その物件の保管を始めた日時及び保管の場所
  • 前各号に掲げるもののほか、保管した物件を返還するため必要と認められる事項

消防署に掲示してもなかなか所有者が現れない… 消防署に掲示してから14日間が経っても所有者が誰か分からない場合は、その公示の要旨を市町村の公報又は新聞紙に掲載します。

最初の公示の日から起算して六月を経過してもなお所有者が特定できず物件を返還できない場合は所有権が市町村に帰属するため、売却することになります。

消防法第3条第2項

災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第六十四条第三項から第六項までの規定は、前項の規定により消防長又は消防署長が物件を保管した場合について準用する。この場合において、これらの規定中「市町村長」とあるのは「消防長又は消防署長」と、「工作物等」とあるのは「物件」と、「統轄する」とあるのは「属する」と読み替えるものとする。

電子政府の総合窓口 e-Govより法令文引用

これだけではなかなかイメージできないので読み替え後の災害対策基本法を見てみましょう!

災害対策基本法第64条(応急公用負担等の読み替え)

3 消防長又は消防署長は、前項後段の規定により物件を保管したときは、当該物件の占有者、所有者その他当該工作物等について権原を有する者(以下この条において「占有者等」という。)に対し当該物件を返還するため、政令で定めるところにより、政令で定める事項を公示しなければならない。

4 消防長又は消防署長は、第二項後段の規定により保管した物件が滅失し、若しくは破損するおそれがあるとき、又はその保管に不相当な費用若しくは手数を要するときは、政令で定めるところにより、当該工作物等を売却し、その売却した代金を保管することができる。

5 前三項に規定する工作物等の保管、売却、公示等に要した費用は、当該物件の返還を受けるべき占有者等の負担とし、その費用の徴収については、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)第五条及び第六条の規定を準用する。

6 第三項に規定する公示の日から起算して六月を経過してもなお第二項後段の規定により保管した物件(第四項の規定により売却した代金を含む。以下この項において同じ。)を返還することができないときは、当該物件の所有権は、当該消防長又は消防署長の属する市町村に帰属する。

行政の最大級の権限である消防法第3条第4項の代執行を解説!

消防長又は消防署長の権限において代執行を命じることが可能です。しかし代執行は行政機関に認められた最大級の権限であるため、その執行方法については注意を要します。

代執行は行政代執行法に基づいて実施することが定められています。

消防法第3条第4項

消防長又は消防署長は、第一項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又はその措置の履行について期限が付されている場合にあつては履行しても当該期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、当該消防職員又は第三者にその措置をとらせることができる。

電子政府の総合窓口 e-Govより法令文引用

行政代執行法で特に重要となる第2条と第3条は一度目を通してください。ここから実務的な手法を解説します!

行政代執行法

第二条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。

第三条 前条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない。

2 義務者が、前項の戒告を受けて、指定の期限までにその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもつて、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知する。

3 非常の場合又は危険切迫の場合において、当該行為の急速な実施について緊急の必要があり、前二項に規定する手続をとる暇がないときは、その手続を経ないで代執行をすることができる。

電子政府の総合窓口 e-Govより法令文引用

代執行の実務 STEP1 代執行の可否の確認

命令違反の内容等が、代執行の要件に該当するか否かを確認する必要があります。

次のいずれかに該当するとき代執行の要件に該当すると判断します。

代執行の要件について
  • 措置を履行しないとき
  • 履行しても十分でないとき
  • 措置の履行について期限が付されている場合にあっては履行しても当該期限までに完了する見込みがないとき

具体例としては、屋外の駐車場に存置されたガソリン入りのポリタンクの除去命令(法第3条第1項第3号)を発動したが、受命者が履行しない時等を考えます。

代執行要件に該当すると判断した場合STEP2に進みます。

代執行の実務 STEP2 代執行の要否の検討

代執行要件に該当し代執行が可能となったら、法令違反の程度や代執行を行うべき緊急性等を総合的に判断し、代執行の要否を決定します。

 代執行要件に該当すれば代執行の実行は可能であるが、改めて代執行の要否を検討するのは、代執行はあくまでも行政強制として行われる終的な措置であるためだからです。本当に代執行をする必要はあるのかという点は警察比例の原則や人命危険の有無等に照らして考えます。

代執行の実務 STEP3 代執行前の事前準備

代執行を組織として行う!と決定したならば次の準備はこの3点が重要です。市町村に広報課がある場合はマスコミ対応等を視野に入れると協力依頼する方がスムーズに事が進みそうですね。告発に関しては必要資料の調整を行うためにも検察機関や警察機関と調整を図ります。既に命令をスルーされてしまっているため、告発するならこのタイミングですね!

・関係行政機関・マスコミへの情報提供を行うこと。
・行政不服審査又は行政事件訴訟の提起に対する対応策の検討をすること。
・命令違反に対する告発の検討をすること。

代執行の実務 STEP4 戒告及び代執行令書の通知

相当の履行期限を定め、その期限までに履行されないときは代執行を行う旨通知します(戒告)。 なお、文書によらない戒告は、要件を欠くものとして無効となります。しかし、行政代執行法第3条第3項に記載の通り、『非常の場合又は危険切迫の場合において、当該行為の急速な実施について緊急の必要があり、前二項に規定する手続(※予め文書で戒告すること及び代執行令書を指します。)をとる暇がないときは、その手続を経ないで代執行をすることができる。』とされています。暇が無い危険性かどうかの判断が重要になりますね。

 代執行の戒告、代執行令書による通知及び代執行費用納付命令は行政庁の処分であるから、行政不服審査法に定める審査請求の対象となります。戒告書等には、審査請求ができる旨並び審査請求をすべき行政庁名及び審査請求期間(戒告等の処分のあったことを知った日の翌日から起算して60日以内)を教示する必要があります。

 戒告で「代執行しますよ!」と最後通告した次は代執行令書の通知です。

 ここでは代執行を行う日時、代執行のために派遣する執行責任者の氏名、代執行のための費用の概算見積額を義務者に通知します。執行責任者は、突発の事故に備えて複数選任することが望ましいです。代執行令書は「いつ、誰を派遣して、いくら費用がかかるのか」と代執行の具体的な内容が記載されたものになります。

代執行の実務 STEP5 代執行の実行から改修完了へ 

代執行の実行について

行政庁は自ら義務者のなすべき行為をなし、(行政庁の所属職員の手で行わしめるか、又は、所属職員に命じ、雇い入れられた作業員を、指揮して行わしめる。)又は、第三者をしてこれを行わしめる(土建業者などと請負契約を締結してそれに行わしめる。)。いずれの場合においても、執行責任者は、代執行の事実行為についての責任者として、作業の実施にあたる者に対して必要な指示を行い、執行責任者証を携帯し、相手方や関係人の要求があるときはこれを呈示しなければならない。

違反処理標準マニュアルより引用

難しい引用をしましたが、代執行実行のポイントは次の5点です。

  • 行政関係機関やマスコミと連携し代執行を広報します。
  • 違反者の抵抗が予想される場合は警察機関に予め協力を仰ぎましょう。
  • 執行責任者の指揮により、代執行を実行します。
  • 執行責任者は、代執行権者が発行する「代執行執行責任者証」を携帯します。
  • 捜査機関への告発後代執行により消防法令違反が是正された場合は、速やかに当該捜査機関に連絡することを忘れないようにします。

おわりに

消防法第3条についての命令内容は良く理解できましたか? 第3号と第4号の物件についての理解はとても重要です!

消防法第5条の3についても同様に第3号と第4号の物件の違いは準用されていますね。東京消防庁が先日PH階へと続く屋内階段内の不燃性ロッカーに対し5条の3命令を発動しましたが、裁判で命令内容は不適当と判断されました。各号に対する危険性の判断を消防機関の責務です。その物件の危険性個別に考えることが今の時代求められています。

例えば第3号の燃焼のおそれのある物件の危険性は、可燃物であるため放火され燃焼する可能性があるから「火災の予防に危険」である。さらには燃焼した時に煙も発生するため「消火、避難その他の消防の活動に支障」にもなり得ます。しかし、第4号の燃えない物件であれば燃焼しないため「火災の予防に危険」であるとは言えませんが、「消火、避難その他の消防の活動に支障」になるから命令する訳です。

また、略式の代執行や代執行は公権力の最大級の行使となりますが、影響を与えるのは違反者だけではありません。広報メディアを通じて「何が火災予防上危険で問題なのか」を多くの市民に伝えることができます。大変な労力となりますが効果や影響は大きいためチャンスと考えましょう!

命令根拠を意識し、適切な命令を心がけましょう!

予防技術検定にチャレンジ!〈消防法第3条関係編〉(問題数4)

チャレンジ問題 第1問

消防法第3条についての次の記述について、適当でないものを1つ選べ。

  1. 消防法第3条第1項の命令権者に消防吏員及び消防職員は含まれている。
  2. 屋外においてタイヤ(合成樹脂類)が多量に放置されていたため、火災の予防に危険であると判断し、消防署長名でタイヤの管理者に物件の整理を命じた。
  3. 火災注意報発令中に畑で大規模な野焼きを実施していたため、火災の予防に危険であると判断し、消防吏員名で行為の禁止を命じた。
  4. 消防法第3条第1項の命令をした場合、標識の設置その他総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
ちょっとだけ答えを確認する?
答え 1及び4  消防職員には命令権がないため不適当。第3条第1項命令では公示について定められていないため不適当。
チャレンジ問題 第2問

消防法第3条第2項の略式の代執行についての記述について次の(ア)及び(イ)の空欄に当てはまる文言の組み合わせについて正しいものを選べ。

 消防長又は消防署長は、火災の予防に危険であると認める物件又は消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める物件の( ア )で権原を有するものを確知することができないため、これらの者に対し、前項の規定による必要な措置をとるべきことを命ずることができないときは、それらの者の負担において、当該( イ )(消防本部を置かない市町村においては、消防団員。第四項(第五条第二項及び第五条の三第五項において準用する場合を含む。)及び第五条の三第二項において同じ。)に、当該物件について前項第三号又は第四号に掲げる措置をとらせることができる。

番号(ア)(イ)
所有者、管理者又は占有者消防職員
所有者、管理者又は占有者消防吏員
所有者、管理者、占有者又は関係のあるもの消防職員
所有者、管理者、占有者又は関係のあるもの消防吏員
クリックして答えを確認!
答え 1
チャレンジ問題 第3問

消防法第3条の内容についての記述のうち、誤っているものを1つ選べ。

  1. 消防法第3条第1項命令の発動要件である「消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める」とは、公設消防の活動に支障となる場合に限る。
  2. 消防法第3条第2項に定める略式の代執行について、「確知すること」とは、名あて人が現場に居合わせる場合等、氏名及び住所を知ることができる場合に限らず、その者を特定することのできる場合全般をさすものである。
  3. 消防法第3条第2項及び同法第5条の3第2項の規定による措置を行った場合の保管費用については、消防法第3条の規定で災害対策基本法第64条の規定を準用し、物件の保管、売却、公示等に要した費用の額及び納期日を定め、文書により本来の措置の履行義務者に対して請求する。請求したにもかかわらず相手方が支払わない場合は、国税徴収法(国税滞納処分)の例により、強制徴収することができる。
  4. 消防吏員は消防法第3条第1項の命令権を有し処分権者になり得る。しかし、消防法第3条第2項の略式の代執行及び同法第4項の代執行についての処分権者にはなり得ない。
クリックして答えを確認!
答え 1 「消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める」とは、消火、避難等消防の活動に支障になる場合一般をいい、必ずしも公設消防の活動に支障となる場合に限られず、防火対象物の関係者の消火や避難の活動も含むものである。
チャレンジ問題 第4問

消防法第3条第4項の代執行についての記述について誤っているものを1つ選べ。

  1. 命令権者は消防長又は消防署長であり、 消防職員又は第三者にその措置をとらせることができる。
  2. 行政代執行法に定められる代執行の要件は、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、かつその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められる場合である。
  3. 代執行をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書又は口頭で戒告しなければならない。
  4. 非常の場合又は危険切迫の場合において、当該行為の急速な実施について緊急の必要があ ったため文書による戒告及び代執行令書の手続をとる暇がないと判断し、その手続を経ないで代執行を行った。
クリックして答えを確認!
答え 3  文書によらない戒告は、要件を欠くものとして無効となります。

コメント

  1. ゆう より:

    コメントにて質問失礼します。
    チャレンジ問題第3問の選択肢4にある、「消防吏員は消防法第3条第1項の命令権を有しているが、消防法第3条第2項の略式の代執行及び同法第4項の代執行についての措置権限は有しない。」との記載についてです。
    措置権限について、法第3条第2項ですと当該消防職員、4項ですと当該消防職員又は・・・となっておりますが、消防職員の中に消防吏員は含まれると考えます。そのため、選択肢4は誤りとの認識でしたが、いかがとお考えでしょうか。よろしくお願いします。

    • あっちゃん より:

      ゆう様 コメントありがとうございます。ご指摘の内容通り消防吏員は代執行命令等において必用な措置を取ることができると解します。権限とは国家や公共団体が、法令の規定に基づいて職権を行うことのできる範囲とされます。法第3条第2項を例にとると「それらの者の負担において、当該消防職員に、当該物件について前項第三号又は第四号に掲げる措置をとらせることができる」との部分が措置権限であり、その権限を有しているのは消防長又は消防署長になります。というのが出題者としての意図でしたが、読み手に誤解を与えかねない表現だったと反省しています。「措置権限」から「処分権者」へと修正します。

      • ゆう より:

        ご丁寧にありがとうございました。いつも拝見させていただき、勉強になっております。引き続きよろしくお願いいたしたす。

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