【2020年版】小規模な飲食店への消防法規制を分かり易く解説!

厨房の様子 消防用設備等

2019年10月から延べ面積150㎡未満の小規模な飲食店にも消火器が必用になるって話だよね。でも、消防からの立入検査で「自火報」とか「非常ベル」が必用って言われたよ… 改正内容は消火器なハズなのにどうして?

そもそも飲食店ってどういう規制を受けるの?

この記事では、小規模な飲食店に対する消防法の規制を順序立てて説明し、上記のような疑問を解決します。

  • 一般住宅併用型の飲食店
  • 階数が1~3階建てで延べ面積が500㎡未満の飲食店
  • 150㎡未満で今回の法改正で消火器が義務になる飲食店
  • 居抜きで小規模な飲食店を考えている。

どれか一つでも当てはまれば読む価値はあります!

2019年10月から150㎡未満の飲食店に対し、消火器の設置が新たに必要となる法改正が施行されました。今までは消防機関の立入検査が無かったような小規模な飲食店であっても、今回の法改正を機に立入検査の実施が行われる可能性は非常に大きいです。消防法と建築基準法に基づく小規模な飲食店について解説します!

消防法の規制は構造、規模、用途が重要! 消防法規制を判断する!

小規模な飲食店に特化した消防法規制を判断する各STEP

2019年10月から150㎡未満の飲食店に対し、消火器の設置が新たに必要となる法改正が施行されました。今までは消防機関の立入検査が無かったような小規模な飲食店であっても、今回の法改正を機に立入検査の実施が行われる可能性は非常に大きいです。

その際に、改正内容である「消火器を設置しなさい!」という指導だけなら良いのですが、実は知らず知らずの内に消防法違反となっているという可能性は0ではありませんよね。

ちょっとした増改築やレイアウト変更から自動火災報知設備が必用となっていれば、「2週間後に違反内容を消防局HPで公開します」「使用停止命令を視野に警告します」と強く指導されることも… 

今まで消防機関の立入検査が無かったのにどうして!? と疑問や怒りを覚える方も見えるかもしれませんがそれには理由があります。実は消防機関の立入検査はすべての飲食店を対象としていた訳では無く、消火器が義務となる規模かどうかで立入検査計画を考えていることが多いです。なので今回改正で、オープンデータや保健所の菓子製造業や飲食店営業許可のデータを基に「初めて立入検査に来られた!」といった例はもっと増える可能性があります。

もちろん悪意があって違反している訳では無いため、直せるところは立入検査前に直し、心配なら先に管轄の消防署に相談してしまいましょう!

これから上図にある各STEPごとに必要な消防設備等を解説します。

STEP1 用途の決定 ≪小規模飲食店の用途はどうなるの? 16項イ? 3項ロ? もしかして一般住宅?≫

消防法の規制対象になるかどうかで重要なのは用途です。飲食店は消防法施行令別表第1で3項ロに区分されています。

飲食店だけの建物なら用途も判別が簡単ですが、飲食店以外にコンビニが入っていたり、一般住宅の一部が飲食店だったりと、世の中には複雑な建物が数多く存在します。そんな場合、用途は〈複合用途〉として考えます。

小規模飲食店の用途 複合用途の考え方 

複合用途(16項イ)となる飲食店の例

飲食店以外の施行令別表の用途が1以上入る場合、建物全体の用途は基本的には16項イとなります。しかし、飲食店以外の用途が金券ショップのような、ごく小規模な用途が入る場合はみなし従属が適用され、建物全体が飲食店となる可能性もあります。

一般住宅と飲食店になる場合の組み合わせは少し独特で、一般住宅部分と飲食店部分が同規模か一般住宅部分の方が大きい、かつ、飲食店部分が50㎡をこえる場合は複合用途(16項イ)となります。でも逆に、飲食店部分が50㎡未満であれば一般住宅とみなされ、消防法令の設備規制はほとんどなくなります。もちろん消火器の設置も飲食店としては法令義務はありません。

一般住宅となる例

でも、一般住宅部分に比べて飲食店の方が大きければ、建物全体が飲食店としてみなされます。消火器や誘導灯が用途で義務が生じる場合、一般住宅部分でも飲食店として規制され設置義務が広がります。

飲食店部分の方が大きければ建物全体が飲食店としてみなされる

STEP2 ≪特定1階段等防火対象物≫3階部分が飲食店用途で、階段は屋内階段が1のみとなっていないか?

続いて階数での規制です。2階建てや平屋建ての場合はこのSTEP2は飛ばしてもらっても問題ありません。

3階以上の階に飲食店部分があり、そのからの避難経路が屋内階段の1つしか無い場合は特定1階段等防火対象物として大幅規制強化されます。その最大の特徴は特定1階段等防火対象物となれば自動火災報知設備が面積に関係なく必用になります。

「でもウチは3階は従業員更衣室や物置だから大丈夫だ」と思ったあなたは要注意です!消防法は建築基準法のように特殊建築物の居室があるかどうかで考えている訳では無く、飲食店の従属分部であれば、その部分も飲食店として規制されます。

例えば次のような例で3階に従業員更衣室や事務所がある場合、もともと2階建てだったけど屋上部分に倉庫を増築した場合は特定1階段等防火対象物になる可能性が非常に高く危険です。

特定1階段等防火対象物になり自火報が必用になる例

STEP3 収容人員の算定方法! 非常ベルや避難器具、防火管理者が必要かも!?

収容人員に基づいた消防設備等は設置されているかを判別するためには、消防法での計算の仕方を知る必要がありますね。収容人員の算定方法は消防法施行規則第1条の3に定められています。

端的に纏めると〈従業員数+客席での算定結果〉です。

これで建物全体の人数と階ごとの人数を考えます。

消防法施行規則第一条の三(収容人員の算定方法)

次に掲げる数を合算して算定する。

一 従業者の数

二 客席の部分ごとに次のイ及びロによつて算定した数の合計数

  固定式のいす席を設ける部分については、当該部分にあるいす席の数に対応する数。この場合において、長いす式のいす席にあつては、当該いす席の正面幅を〇・五メートルで除して得た数(一未満のはしたの数は切り捨てるものとする。)とする。

  その他の部分については、当該部分の床面積を三平方メートルで除して得た数

小規模な飲食店であれど収容人員は20人、30人と簡単に増えます。

だって、客席部分が100㎡あればそれだけで33人はお客さんが入る計算になりますもの。

収容人員の算定結果で知ってほしいのは次の規制内容です。小規模なものに限定していますのでこれぐらいかと。

  • 階段が1つしか無い場合、2階以上の階での収容人員が10人以上なら避難器具が必用!
  • 階段が2以上ある場合でも階の収容人員が50人以上でも避難器具が必要!(でも、主要構造部を耐火構造とした建築物の2階なら対象から除かれる。)
  • 無窓階の収容人員の合計が20人以上なら非常ベルが必用!
  • 防火対象物全体で30人以上なら防火管理者の選任が必用!
  • 防火対象物全体で50人以上でも非常ベルが必用!

収容人員で多いのが避難器具ですね。物置から客席に改装した、固定椅子を取り払って座敷にした等の理由で収容人員が10人以上になることが多く感じました。

2階なら、飛び降りてでも避難が可能ですが、3階以上だと死活問題ですよ…

階段が1つしか無く10人以上なら避難器具が必用となる例

避難器具の中でも飲食店であれば、「避難ロープ」も設置することができます。

避難ロープは非常に安価であることと、設置が非常に容易です。自身で届出を受ける事もできますので管轄の消防署に避難ロープでも良いか聞いてみてはどうでしょうか?

吊り下げはしごも消防設備士工事の対象外なので自身で設置できます。

STEP4 無窓階判定にはなっていないか?

無窓階といって、避難や消防活動上有効な開口部が極端に少ないと、火災が発生したときに避難行動や救出活動、消火活動が困難になることから、消防設備等の規制が強化されます。無窓階となる条件は次の2つです。どちらか1つでも該当すると無窓階となってしまいます。

無窓階となってしまう条件
  • 「直径50cmの円」が内接できる開口部の面積の合計が床面積の30分の1以下
  • 「75cm×1.2m」又は「直径1mの円」が内接できる開口部が1つだけ

無窓階となった時どうなるかと言えば、はズバリ規制される面積の短縮です。

  • 消火器 安全装置の設置に拘わらず50㎡で義務(厨房は設置単位の強化対象)
  • 自動火災報知設備 300㎡から無窓階は100㎡に短縮!
  • 屋内消火栓設備 700㎡から無窓階は150㎡に短縮!
  • 非常警報設備 50人以上から20人以上に短縮!

私が特に注意して欲しいのは自動火災報知設備の設置が必要になる100㎡です! 自動火災報知設備と屋内消火栓設備は階での規制となります。なので、建物全体に非常ベルが設置されていたとしても、無窓階は自動火災報知設備が必用になり、設備の設置が非常に複雑になります。

開口部についてはいくつか条件がありますので、詳しく知りたい方は下記記事をご覧ください。

番外編 消火器の設置免除と附加設置

消火器の設置本数については、消火器の設置義務が生じる理由によって異なります。(3)項に掲げる防火対象物で、火を使用する設備又は器具を設けたもののうち、延べ面積が150㎡未満のものを「小規模特定飲食店等」といいます。消火器の必用設置数等について以下解説します!

150㎡未満の飲食店で火を使用する設備又は器具には過熱防止装置等がある!

無窓階に判定されていないことが前提ですが、この場合は消火器の設置義務はありません。

法文上は火を使用する設備又は器具に防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられたものは消火器の設置義務が生じないことが記載されていますが、この「防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられたもの」とは過熱防止装置やフードダクト自動消火設備のような自動的に火災危険を排除するような装置を指します。

150㎡未満の飲食店だが、火を使用する設備又は器具に過熱防止装置等が無い

こちらも無窓階に判定されていないことが前提となります。小規模特定飲食店として規制され、消火器の設置義務が生じます。火を使用する設備又は器具が設けられている階ごとに消火器に至るまでの歩行距離が20m以内になるように配置する必要があります。法文を逆読みすれば、2階建てで1階だけに火を使用する設備が設置されている場合は2階に消火器は不要(設置義務は無い)となります。

150㎡以上の飲食店

防火対象物全体に消火器の設置義務が生じるため、階ごとに消火器に至るまでの歩行距離が20m以内になるように配置する必要があります。2階が物置だけで20㎡ほどしかない場合でも全階ごとに消火器の設置義務が生じています。

さらに、附加設置といい、多量の火気を使用する場所があるときは、階ごとに必要な消火器に加えて、能力単位の数値の合計数が、当該場所(多量の火気を使用する場所)の床面積を25㎡で除して得た数以上の数値となるように設けなければならないとされています。

この多量の火気を使用する場所については各消防本部で取扱が異なるため厨房の面積や火気設備の合計入力W数を伝えて付加設置が必要かどうかを確認する必要があります。

飲食店のうち無窓階で50㎡以上の階

こちらは「150㎡以上の飲食店」とほぼ同じ取り扱いですが、異なる点は階規制であるところです。

番外編 誘導灯は必ず必用!?

誘導灯は面積や収容人員に関係無く最終出口や階段の出入口、階段内の非常照明装置の設置が必要になります。

特に階段内の非常照明装置は免除するような基準が消防法令に記載されないため、建築基準法で設置根拠が無くても設置が必要です(階段通路誘導灯として)

最終出口や階段前の誘導灯は消防法施行規則28条の2の基準で見通しが良ければ設置免除が可能となる場合もあるため、消防機関に図面や写真を見せて設置要否を相談することをオススメします。

建築基準法

新築物件の時は、建築士さんが消防法や建築基準法に基づく規制を判断し設計してくれるため、任せておけますが、居抜きの場合は必ずしもそうとは限りません。対象の物件の規制がどうかかるかをある程度考えておく必要があるため、以下の点に注意して下さい。

STEP1 確認申請は必用か?

もともと飲食店であれば、建築確認申請は不要の可能性が高いですが、前オーナーが用途変更の手続きを怠り用途変更の手続きがされていない場合もあります。最も新しい建築確認申請図書があれば用途を確認するようにしましょう。

一般住宅や事務所用途等からの変更であれば、飲食店の面積が200㎡を超える場合には確認申請が必要です。その際は建築士に手続きを依頼します。厨房に内装制限等の規制がかかる可能性が高いです。

STEP2 3階に飲食店用途がある場合は構造に注意!

建築基準法第27条により、3階に飲食店用途がある場合は耐火建築物等とする必要があるため、注意が必要です。しかし、令和元年の建築基準法改正により延べ面積200㎡未満の建築物は耐火建築物等とする義務の対象から外されました。200㎡未満なら確認申請も耐火要件も不要ということになります。

STEP3 確認申請不要なら建築基準法は考えなくてもよい?

答えはNOです!

よくある勘違いですが、確認申請不要だからといって建築基準法を遵守しなくても良いという訳ではありません。特に抜け落ちる可能性として無窓の居室や内装制限を知らず知らずのうちに基準から違反していることがあります。確認申請不要でも建築士を通して依頼しましょう!

おわりに

飲食店への消防法の規制について分かりましたか? 他にも防炎物品を使用したり、避難経路を整然と維持する必要があったりと、消防法では利用者と従業員の安全を最大限考えています。でも考えてみて下さい。いくら消防用設備等にお金をかけて維持していたとしても、火災が発生しなければ無駄に感じます。消防用設備等は火災が起きてしまった時の最後の頼りです。火災を起こさないように従業員を指導したり、防火安全対策をしっかり守ること、放火されないようにゴミを放置しないこと等のごく当たり前の日常の防火管理が重要だと筆者は考えます。

消防機関の立入検査への対応は煩わしいかもしれませんが、「より安全にするための改善点」を探されていると前向きに対応していただければ幸いです。消防機関も粗捜しのような立入検査にならないよう言葉遣いや指導方法には注意しましょう!

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