消防昇任試験は目で覚えて攻略!消防組織法の要点と解説

昇任試験関連

消防の階級を上げるためには昇任試験の突破が必要だけど、関係法規の幅が広い、試験頻度が何年かに1回、合格予定者が少ない…とやる気を出すにはマイナス要素が非常に多いよね。

でも、階級や給料を上げるためには頑張るしかありません!ほぼ確実に出題範囲とされる消防組織法について解説します!

消防の組織は階級制度となっており、給料を上げるためには階級を上げる事が必須条件となります。階級を上げるためには昇任試験の突破が必要ですが、ポスト管理や団塊の世代の一斉退職に併せた職員の大量採用世代が昇任試験の受験ができる年代になってきたことから、昇任試験の競争率は年々高くなっている消防本部が多いです。

昇任試験での科目は「消防関係法規」、「火災予防」、「警防活動」に分かれることがオーソドックスであり、消防法や消防組織法の理解は必須と言えます。

今回は、消防組織法のポイントを解説します。

消防の任務とは?

消防組織法は昭和23年3月7日に法施行され、消防事務が警察から独立し、市町村の事務とされました。消防組織法の施行を祝い、3月7日は消防記念日とされていますね。

消防の法律と言えば、消防の任務について定めた「消防組織法」と消防の権限や義務について定めた「消防法」に分かれます。消防法の施行日は昭和23年8月1日であり、組織法に比べて約5か月遅れての施行です。

余談ですが、「警察法」に関しては1条、2条に警察法の目的と警察の責務の両方が定められており、組織法と法の2つに分かれるということはありません。

まずは消防の任務について法文を読んでみましょう。

消防組織法 第1条

消防は、その施設及び人員を活用して、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、水火災又は地震等の災害を防除し、及びこれらの災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行うことを任務とする。

深掘りする必要がありそうなワードをいくつか解説します。

ここで言う「消防」は消防の組織と作用の総称です。国民の~と続くことから、市町町消防だけでなく、都道府県、国が含まれることが分かりますね。

火災とは

火災とは・・・である。といったように、明確な定義が法令等にある訳ではありません。しかし、消防の世界では火災とは「火災報告取扱要領(平成 6 年 4 月 21 日付消防災第 100 号)」に定められたものを指しています。

火災報告取扱要領(平成 6 年 4 月 21 日付消防災第 100 号)

火災とは、人の意図に反して発生し若(も)しくは拡大し、又は放火により発生して消火の必要がある燃焼現象であって、これを消火するために消火施設又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするもの、又は人の意図に反して発生し若しくは拡大した爆発現象

消防で「火災」として取り扱うには3つの条件があり、取扱要領から抜き出すと次のように分けられます。

  1. 人の意図に反して発生し若(も)しくは拡大し、又は放火により発生
  2. 消火の必要がある燃焼現象
  3. これを消火するために消火施設又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするもの

例えば、キャンプファイアーを考えてみると、「人の意図に反して」ではありませんよね。安全に行えているうちは火災には該当しませんが、突然の強風等で「人の意図に反して拡大」して燃え広がれば火災になり得ます。

災害とは

「災害」については災害対策基本法を見てみましょう。単なる自然現象ではなく、そこから生ずる被害を災害と言います。

災害対策基本法 第2条第1項

≪災害≫ 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。

市町村の消防責任とその費用

消防の責任は市町村にあり、費用に関しても市町村が負担することが定められています。カネの負担も責任も市町村です!

地方自治法第5条に「普通地方公共団体の区域は、従来の区域による。」とありますが、区域については解説に委ねられており、地域に隣接する湖や海、それらの上空地下までもが含まれています。

湖や海においては市町村の区域である以上消防責任を有しますが、それと同時に「法令の海上における海難救助」は海上保安庁法において海上保安庁の任務ともされています。実務上の管轄はありますが、海上においては消防責任が免除される訳では無いため注意が必要です。領海での船舶火災は市町村消防と海上保安庁の両者が消防責任を有していると質疑応答で回答されています。

消防組織法

第六条 市町村は、当該市町村の区域における消防を十分に果たすべき責任を有する。

第八条 市町村の消防に要する費用は、当該市町村がこれを負担しなければならない。

市町村長の管理責任と任命権等について

市町村長の責任や承認について纏めて覚えてしまいましょう。

消防責任については市町村が責任を有する(組織法第6条)とされていましたが、管理については市町村長です。

消防を果たすべき責任市町村消防の管理
市町村市町村長
(組織法第6条)(組織法第7条)

市長村長の承認を得て

消防長、消防団長は市町村長が任命しますが、消防団長は消防団からの推薦が必要です。市町村長の承認が必要なのは次の3つです。

  • 消防署の組織
  • 消防長以外の職員の任命
  • 消防団長以外の消防団員の任命
消防組織法

第七条 市町村の消防は、条例に従い、市町村長がこれを管理する。

第十条第2項 消防本部の組織は市町村の規則で定め、消防署の組織は市町村長の承認を得て消防長が定める。

第十五条 消防長は、市町村長が任命し、消防長以外の消防職員は、市町村長の承認を得て消防長が任命する。

第二十二条 消防団長は、消防団の推薦に基づき市町村長が任命し、消防団長以外の消防団員は、市町村長の承認を得て消防団長が任命する。

定めるのは条例?それとも規則?

条例で定める事と規則で定める事に分かれます。法文をそれぞれに分けますが、覚え方は議会で定める全体的な事項【みんなで決めないとダメ】であるのか、それとも首長によって決められる組織の内部的な事項【トップの決定で可】なのかを意識すると良いです。

条例【みんなで決めないとダメ】規則【トップの決定で可】
消防本部及び消防署の設置、位置及び名称並びに消防署の管轄区域消防本部の組織
消防職員の定員消防吏員の階級並びに訓練、礼式及び服制に関する事項
消防長及び消防署長は、これらの職に必要な消防に関する知識及び経験を有する者の資格消防職員委員会に関する事項
消防団の設置、名称及び区域消防団の組織
消防団員の定員消防団員の階級並びに訓練、礼式及び服制に関する事項
非常勤の消防団員の任用、給与、分限及び懲戒、服務その他身分取扱いに関して市町村の消防の支援のための都道府県の航空消防隊の設置
非常勤消防団員に対する公務災害補償に関する基準
非常勤消防団員に対する退職報償金に関する基準
消防組織法【条例で定める】

第十条 消防本部及び消防署の設置、位置及び名称並びに消防署の管轄区域は、条例で定める。

第十一条 第2項 消防職員の定員は、条例で定める。ただし、臨時又は非常勤の職については、この限りでない。

第十五条 第2項 消防長及び消防署長は、これらの職に必要な消防に関する知識及び経験を有する者の資格として市町村の条例で定める資格を有する者でなければならない。

第十八条 消防団の設置、名称及び区域は、条例で定める。

第十九条 第2項 消防団員の定員は、条例で定める。

第二十三条 消防団員に関する任用、給与、分限及び懲戒、服務その他身分取扱いに関しては、この法律に定めるものを除くほか、常勤の消防団員については地方公務員法の定めるところにより、非常勤の消防団員については条例で定める。

第二十四条 消防団員で非常勤のものが公務により死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、又は公務による負傷若しくは疾病により死亡し、若しくは障害の状態となつた場合においては、市町村は、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、その消防団員又はその者の遺族がこれらの原因によつて受ける損害を補償しなければならない。

第二十五条 消防団員で非常勤のものが退職した場合においては、市町村は、条例で定めるところにより、その者(死亡による退職の場合には、その者の遺族)に退職報償金を支給しなければならない。

消防組織法【規則で定める】

第十条 第2項 消防本部の組織は市町村の規則で定め、消防署の組織は市町村長の承認を得て消防長が定める。

第十六条 第2項 消防吏員の階級並びに訓練、礼式及び服制に関する事項は、消防庁の定める基準に従い、市町村の規則で定める。

第十七条 第4項 前三項に規定するもののほか、消防職員委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、消防庁の定める基準に従い、市町村の規則で定める。

第十八条 第2項 消防団の組織は、市町村の規則で定める。

第二十三条 第2項 消防団員の階級並びに訓練、礼式及び服制に関する事項は、消防庁の定める基準に従い、市町村の規則で定める。

第三十条 第3項 都道府県知事は、第一項の規定に基づく市町村の消防の支援のため、都道府県の規則で定めるところにより、航空消防隊を設けるものとする。

チャレンジ問題

一問一答

第1問【一問一答】

消防庁の長は誰か?

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答え 消防庁長官〈組織法第3条〉
第2問【一問一答】

市町村の区域における消防を十分に果たすべき責任を有するのは誰か?

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答え 市町村〈組織法第6条〉
第3問【一問一答】

市町村の消防は誰が何に従い管理するのか?

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答え 市町村の消防は、条例に従い、市町村長がこれを管理する。〈組織法第7条〉
第4問【一問一答】

市町村が、その消防事務を処理するため、全部又は一部を設けなければならない消防施設を答えよ。

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答え 消防本部、消防署、消防団〈組織法第9条〉
第5問【一問一答】

消防長以外の消防職員の任命方法は?

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答え 市町村長の承認を得て消防長が任命する。〈組織法第15条〉
第6問【一問一答】

消防職員に関する任用、給与、分限及び懲戒、服務その他身分取扱いに関しては、この法律に定めるものを除くほか、何の定めるところによるのか?

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答え 地方公務員法〈組織法第16条〉
第7問【一問一答】

消防職員委員会の委員長は消防長が指名する者をもって充てることとされているが、どのような消防職員が対象とされるのか?

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答え 委員長は消防長に準ずる職のうち市町村の規則で定めるものにある消防職員のうちから消防長が指名する者をもつて充てる〈組織法第17条第3項〉
第8問【一問一答】

消防団長は誰がどのように任命するのか?

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答え 消防団長は、消防団の推薦に基づき市町村長が任命する〈組織法第22条〉
第9問【一問一答】

非常勤の消防団員について任用、給与、分限及び懲戒、服務その他身分取扱いに関しては、消防組織法に定めるものを除くほか何に定めるのか?

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答え 非常勤の消防団員については条例で定める。〈組織法第23条〉
第10問【一問一答】

市町村の消防の広域化とは何か?

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答え 二以上の市町村が消防事務(消防団の事務を除く)を共同して処理することとすること又は市町村が他の市町村に消防事務を委託することをいう。〈組織法第31条〉
第11問【一問一答】

広域消防運営計画に定めるべき事項?

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答え 【1】広域化後の消防の円滑な運営を確保するための基本方針 【2】消防本部の位置及び名称 【3】市町村の防災に係る関係機関相互間の連携の確保に関する事項〈組織法第34条第2項〉
第12問【一問一答】

消防庁及び地方公共団体は、消防事務のために警察機関の何を使用できる?

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答え 警察通信施設〈組織法第41条〉

〇✕問題

第1問【〇✕問題】

消防組織法及び消防法はどちらも昭和23年に法施行されており、消防組織法が先に施行された。

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答え 正しい 消防組織法は昭和23年3月7日に法施行、消防法は同年8月1日に法施行
第2問【〇✕問題】

消防は、その施設及び人員を活用して、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害を防除し、及びこれらの災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行うことを任務とする。

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答え 誤っている 災害を防除する対象は正しくは「水火災又は地震等の災害」であり、水災が抜けている。
第3問【〇✕問題】

がけ崩れにより発生した災害の傷病者搬送は、消防の任務である。

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答え 正しい
第4問【〇✕問題】

消防組織法第1条に定める消防の目的について、ここでの「消防」とは消防の組織のみを指しており、これには市町村、都道府県、国が対象とされる。

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答え 誤り 消防組織法での「消防」とは組織及び作用の総称である。
第5問【〇✕問題】

市町村の消防に関する費用は市町村が負担しなければならず、これには消防法第8条に基づき消防計画に定められる自衛消防の組織の運営費用も含まれる。

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答え 誤り 前半部分の費用負担に関しては正しいが、後半の自衛消防の組織の運営費用は防火対象物の管理権原者の責任である。
第6問【〇✕問題】

消防団員に関する任用、給与、分限及び懲戒、服務その他身分取扱いに関しては、消防組織法に定めるものを除くほか、条例でこれを定める。

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答え 誤り 消防団員の場合、常勤は地方公務員法、非常勤は条例と定められる部分が異なる。
第7問【〇✕問題】

消防職員の定員及び消防団員の定員はともに条例でこれを定める。

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答え 正しい
第8問【〇✕問題】

消防長は、市町村長が任命し、消防長以外の消防職員は、市町村長の許可を得て消防長が任命する。

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答え 誤り 一見正しそうに見えますが、正しくは「市町村長の承認」
第9問【〇✕問題】

消防団長は市町村長が任命し、消防団長以外の消防団員は、市町村長の承認を得て消防団長が任命する。

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答え 誤り 消防団長の任命は「消防団の推薦に基づき市町村長が任命」が正しい。
第10問【〇✕問題】

消防吏員、消防団員の階級並びに訓練、礼式及び服制に関する事項は、消防庁の定める基準に従い、市町村の規則で定める。

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答え 正しい
第11問【〇✕問題】

市町村の消防は、消防庁長官又は都道府県知事の運営管理又は行政管理に服することはない。

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答え 正しい
第12問【〇✕問題】

消防庁長官は、国民からの要望に応じ、消防に関する事項について都道府県又は市町村に対して助言を与え、勧告し、又は指導を行うことができる。

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答え 誤り 国民からの要望に応じではなく、必用に応じが正しい。
第13問【〇✕問題】

人口五十万以上の指定都市は、単独に又は都道府県と共同して、消防職員及び消防団員の教育訓練を行うために消防学校を設置することができる。

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答え 正しい

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