防火対象物と消防対象物の違いは理解できるけど、消防法第2条での用語の定義にある防火対象物と施行令別表第1で定められる防火対象物に違いがあるってどういう事?
同じ「防火対象物」という言葉でも、消防法第2条と施行令別表第1で少し対象が異なることを知っていましたか?特に顕著に意味の違いがわかるのは舟車になります。舟車の用語だけを見ると自動車は消防対象物でもあり、防火対象物でもあります。しかし、施行令別表第1に掲げる(20)項に該当しないこともあり得ます。その微妙な違いについて分かり易く解説します。
防火対象物と舟車について用語の定義を再確認!
消防法第2条では防火対象物、消防対象物、舟車について用語の定義が定められています。今回ターゲットとしてお話を進めるのは「自動車(車両)」についてです。自動車は消防法第2条に定められる防火対象物、消防対象物、舟車それぞれ用語の定義全てに該当します。
消防法第2条
防火対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属する物をいう。
消防対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物又は物件をいう。
舟車とは、船舶安全法第二条第一項の規定を適用しない船舶、端舟、はしけ、被曳船その他の舟及び車両をいう。
施行令別表第1に定める(20)項とは?
別表第一で(20)項は「総務省令で定める舟車」とされています。すべての舟車では無く、総務省令で定める一部のものが(20)項とされていることが分かります。結論からお話すると、指定数量以上の危険物や150Kg以上の高圧ガスを運送するような車両は消防法施行令別表第一に掲げる防火対象物となります。
消防法施行規則による防火対象物の用途の指定
消防法施行規則第5条により、まず、道路運送車両法又はこれに基づく命令の規定により消火器具を設置することとされる車両 が(20)項に該当することが定められます。
消防法施行規則 第5条第10項(防火対象物の用途の指定)
令別表第一(二十)項の総務省令で定める舟車は、法第二条第六項に規定する舟車のうち、次の各号に掲げる舟及び車両とする。
- 総トン数五トン以上の舟で、推進機関を有するもの
- 鉄道営業法(明治三十三年法律第六十五号)、軌道法(大正十年法律第七十六号)若しくは道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)又はこれらに基づく命令の規定により消火器具を設置することとされる車両
道路運送車両の保安基準による消火器の設置義務
しかし、道路運送車両法には「消火器の設置が必要な車はコレです!」といったような記載がありません。消防法と消防法施行令のような関係で、消火器の具体的な設置要否が定められる法令は「道路運送車両の保安基準」に定められます。
この「道路運送車両の保安基準」によって、指定数量以上の危険物や150Kg以上の高圧ガスを運送するような車両には消火器の設置が義務付けられ、(20)項に該当するというロジックになる訳です。
指定数量以上の危険物を運ぶ政令ローリーは(20)項に該当することが分かります。
道路運送車両の保安基準 第47条(消火器)
次の各号に掲げる自動車には、消火器を備えなければならない。
- 火薬類(第五十一条第二項各号に掲げる数量以下のものを除く。)を運送する自動車(被牽引自動車を除く。)
- 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)別表第三に掲げる指定数量以上の危険物を運送する自動車(被牽引自動車を除く。)
- 告示で定める品名及び数量以上の可燃物を運送する自動車(被牽引自動車を除く。)
- 150Kg以上の高圧ガス(可燃性ガス及び酸素に限る。)を運送する自動車(被牽引自動車を除く。)
- 前各号に掲げる火薬類、危険物、可燃物又は高圧ガスを運送する自動車を牽引する牽引自動車
- 放射性同位元素等の規制に関する法律施行規則(昭和三十五年総理府令第五十六号)第十八条の三第一項に規定する放射性輸送物(L型輸送物を除き、同条第二項に定めるIP―1型輸送物、IP―2型輸送物及びIP―3型輸送物を含む。)を運送する場合若しくは放射性同位元素等車両運搬規則(昭和五十二年運輸省令第三十三号)第十八条の規定により運送する場合又は核燃料物質等の工場又は事業所の外における運搬に関する規則(昭和五十三年総理府令第五十七号)第三条に規定する核燃料輸送物(L型輸送物を除く。)若しくは同令第十一条に規定する核分裂性輸送物を運送する場合若しくは核燃料物質等車両運搬規則(昭和五十三年運輸省令第七十二号)第十九条の規定により運送する場合に使用する自動車
- 乗車定員11人以上の自動車
- 乗車定員11人以上の自動車を牽引する牽引自動車
- 幼児専用車
少危ローリーは(20)項に該当しないが少量危険物として消火器の設置義務は生じるの?
指定数量以上の危険物を運送する政令ローリーは(20)項に該当することが分かったと思いますが、指定数量未満の少量危険物を運送する少危ローリーはどうなるのでしょうか?
施行令第10条で少量危険物に対しても消火器が義務になったハズだと考えた方もいると思いますが、その考えは不正解です。なぜなら、施行令第10条の少量危険物への規制は「建築物その他の工作物」に限定されています。なので、法令上は少危ローリーには消火器の設置義務が生じていません。しかし、市町村条例や行政指導により設置を求められることもありますので注意が必要です。
まとめ
車両は防火対象物であり、消防対象物にも該当します。しかし、施行令別表第一に定められる(20)項の対象は道路運送車両の保安基準による消火器の設置義務が生じる指定数量以上の危険物や150Kg以上の高圧ガスを運送するような車両になります。消防法施行令第10条第1項第1号イで(20)は面積に関係無く消火器の設置義務が生じていますね。他法令でも消防法でも消火器が義務付けられるとともに、消防法第17条により、消防設備の設置維持義務も生じる訳です。
消防法施行令第10条第1項
消火器又は簡易消火用具(以下「消火器具」という。)は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
一 次に掲げる防火対象物
イ 別表第一(一)項イ、(二)項、(六)項イ(1)から(3)まで及びロ、(十六の二)項から(十七)項まで並びに(二十)項に掲げる防火対象物
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チャレンジ問題1
次の防火対象物について、施行令別表第一に掲げる用途に該当するものはどれか1つ答えよ。
- 住宅
- 長屋
- 少量危険物を運送する車両
- 乗車定員11人以上の自動車
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答え 4 乗車定員11人以上の自動車は道路運送車両の保安基準により消火器の設置が義務付けられるため(20)項に該当する。
チャレンジ問題2
次の防火対象物について、施行令別表第一(20)項に該当しないものをどれか1つ答えよ。
- 150Kgの高圧ガス(酸素)を運送する自動車 (被牽引自動車を除く。)
- 980Lのガソリンを運送する自動車 (被牽引自動車を除く。)
- 1980Lの重油を運送する自動車 (被牽引自動車を除く。)
- 総トン数5トン以上の舟で、推進機関を有するもの
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答え 3 重油の指定数量は2,000Lであり、3は指定数量未満であるため道路運送車両の保安基準による消火器の設置義務を有せず(20)項に該当しない。
コメント
チャレンジ問題2訂正お願いします
灯油→重油なら指定数量未満です
ご指摘、ありがとうございます。修正致しました。