消緊急消防援助隊は消防組織法に定められており、消防昇任試験の出題範囲とされることも多いですね。
大災害が起こった時に緊急消防援助隊の出動の求めや指示があるけども、〈求め〉と〈指示〉で費用負担先も異なるよ。
今回は緊急消防援助隊にポイントを絞り解説します!
緊急消防援助隊は、平成7年(1995年)の阪神・淡路⼤震災を契機として消防組織法に追加されました。消防昇任試験では消防組織法の理解について問われる頻度が高いですが、携わる頻度の少ない緊急消防援助隊の仕組みや消防庁長官の指示権、費用負担等については苦手とされる職員も多いのではないでしょうか?
今回は、そんな消防組織法の中でも緊急消防援助隊にポイントを絞り解説します。
そもそも緊急消防援助隊って何だ?
緊急消防援助隊は、平成7年(1995年)の阪神・淡路⼤震災の教訓を踏まえ創設されました。その教訓とは、⼤規模災害時には被災した都道府県内の消防⼒では災害への対応が非常に難しく、そうなった場合、国家的観点や視点から被災地へと「人」と「もの」を集結させ相互応援させる事で危機を脱しようというものです。
消防組織法第45条には「緊急援助隊とは消防の応援等を行うことを任務として、都道府県又は市町村に属する消防に関する人員及び施設により構成される部隊をいう。」と定められています。
消防組織法第45条 第1項
緊急消防援助隊とは、第四十四条第一項、第二項若しくは第四項の規定による求めに応じ、又は同条第五項の規定による指示に基づき、消防の応援等を行うことを任務として、都道府県又は市町村に属する消防に関する人員及び施設により構成される部隊をいう。
平成7年6⽉に緊急消防援助隊は創設され、平成15年の消防組織法改正により、緊急消防援助隊が法制化(平成16年施⾏)されるとともに、⼤規模・特殊災害発⽣時の消防庁⻑官の指⽰権が創設されました。平成31年3月8日には緊急消防援助隊ロゴマークが創設され制度のPR活動についても進行しているところです。
ロゴマークのデザインは、カラビナをモチーフとしたものであり、緊急消防援助隊として全国の消防本部から出動する隊員同士が、堅く結束し、困難な場面に立ち向かう力強さを表現しています。G-SHOCKの緊援隊モデルにも何気にロゴマークが… G-SHOCKカッコイイですね!
地震、台風、水火災等の非常事態の場合は〈求め〉
消防組織法第44条は第1項~第4項までの〈求め〉の対応と第5項及び第6項の〈指示〉に分ける事ができます。上の図は〈求め〉についての各項での動きを表すものです。
消防組織法第44条 第1項~第4項 〈求め〉
消防庁長官は、地震、台風、水火災等の非常事態の場合において、これらの災害が発生した市町村(以下この条から第四十四条の三までにおいて「災害発生市町村」という。)の消防の応援又は支援(以下「消防の応援等」という。)に関し、当該災害発生市町村の属する都道府県の知事から要請があり、かつ、必要があると認めるときは、当該都道府県以外の都道府県の知事に対し、当該災害発生市町村の消防の応援等のため必要な措置をとることを求めることができる。
2 消防庁長官は、前項に規定する場合において、当該災害の規模等に照らし緊急を要し、同項の要請を待ついとまがないと認められるときは、同項の要請を待たないで、緊急に消防の応援等を必要とすると認められる災害発生市町村のため、当該災害発生市町村の属する都道府県以外の都道府県の知事に対し、当該必要な措置をとることを求めることができる。この場合において、消防庁長官は、当該災害発生市町村の属する都道府県の知事に対し、速やかにその旨を通知するものとする。
3 都道府県知事は、前二項の規定による消防庁長官の求めに応じ当該必要な措置をとる場合において、必要があると認めるときは、その区域内の市町村の長に対し、消防機関(第九条に規定する機関をいう。以下同じ。)の職員の応援出動等の措置をとることを求めることができる。
4 消防庁長官は、第一項又は第二項の場合において、人命の救助等のために特に緊急を要し、かつ、広域的に消防機関の職員の応援出動等の措置を的確かつ迅速にとる必要があると認められるときは、緊急に当該応援出動等の措置を必要とすると認められる災害発生市町村のため、当該災害発生市町村以外の市町村の長に対し、当該応援出動等の措置をとることを自ら求めることができる。この場合において、消防庁長官は、第一項の場合にあつては当該応援出動等の措置をとることを求めた市町村の属する都道府県の知事に対し、第二項の場合にあつては当該都道府県の知事及び当該災害発生市町村の属する都道府県の知事に対し、速やかにその旨を通知するものとする。
この時点での〈求め〉では出動の費用をどうするかといった事項は特に定められていません。
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著しい地震災害その他の大規模な災害又は毒性物質の発散その他の政令で定める原因により生ずる特殊な災害なら〈指示〉
第5項に定められる〈指示〉では対象とする災害にも少し差異があり、NBC事故も対象に含まれています。指示の対象も消防長長官からダイレクトに市町村長に出動指示を与える事ができます。
消防組織法第44条 第5項、第6項 〈指示〉
5 消防庁長官は、第一項、第二項又は前項に規定する場合において、大規模地震対策特別措置法第三条第一項に規定する地震防災対策強化地域に係る著しい地震災害その他の大規模な災害又は毒性物質の発散その他の政令で定める原因により生ずる特殊な災害に対処するために特別の必要があると認められるときは、当該特別の必要があると認められる災害発生市町村のため、当該災害発生市町村の属する都道府県以外の都道府県の知事又は当該都道府県内の市町村の長に対し、第四十五条第一項に規定する緊急消防援助隊(以下この条から第四十四条の三までにおいて「緊急消防援助隊」という。)の出動のため必要な措置をとることを指示することができる。この場合において、消防庁長官は、当該災害発生市町村の属する都道府県の知事及び当該出動のため必要な措置をとることを指示した市町村の属する都道府県の知事に対し、速やかにその旨を通知するものとする。
6 都道府県知事は、前項の規定による消防庁長官の指示に基づき、その区域内の市町村の長に対し、緊急消防援助隊の出動の措置をとることを指示することができる。
〈求め〉との最大の違いは経費の負担を国がすることが定められている点です。
消防組織法第49条 第1項(国の負担及び補助)
第四十四条第五項に基づく指示を受けて出動した緊急消防援助隊の活動(当該緊急消防援助隊が第四十四条の三第一項の規定による指示を受けて出動した場合の活動を含む。)により増加し、又は新たに必要となる消防に要する費用のうち当該緊急消防援助隊の隊員の特殊勤務手当及び時間外勤務手当その他の政令で定める経費は、政令で定めるところにより、国が負担する。
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チャレンジ問題
第1問【一問一答】
消防組織法第44条第1項の非常事態における消防庁長官等の措置要求等について、消防長長官はどのような場合の時に災害発生市町村の消防の応援等のため必要な措置をとることを求めることができるのか?
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答え 地震、台風、水火災等の非常事態の場合
第2問【一問一答】
消防組織法第44条第5項の非常事態における消防庁長官等の措置要求等について、消防長長官はどのような災害の時に災害発生市町村以外の市町村の長に対し、当該応援出動等の措置をとることを自ら求めることができのか?
クリックして答え合わせ
答え 著しい地震災害その他の大規模な災害又は毒性物質の発散その他の政令で定める原因により生ずる特殊な災害 〈毒性物質若しくはこれと同等の毒性を有する物質の発散、生物剤若しくは毒素の発散、放射性物質若しくは放射線の異常な水準の放出又はこれらの発散若しくは放出のおそれがある事故〉
第3問【一問一答】
一の都道府県の区域内において災害発生市町村が二以上ある場合において、緊急消防援助隊が消防の応援等のため出動したときは、当該都道府県の知事が設置するものは?
第4問【虫食い】
調整本部の長は、〈〇〇〇〇〉とし、都道府県知事をもつて充てる。
クリックして答え合わせ
答え 消防応援活動調整本部長
第6問【〇✕問題】
緊急消防援助隊とは、第四十四条第一項、第二項若しくは第四項の規定による求めに応じ、又は同条第五項の規定による指示に基づき、市町村の応援等を行うことを任務として、都道府県又は市町村に属する消防に関する人員及び施設により構成される部隊をいう。
クリックして答え合わせ
答え 誤り 市町村の応援では無く、正しくは〈消防の応援〉
第7問【〇✕問題】
消防長長官は、緊急消防援助隊の出動に関する措置を的確かつ迅速に行うため、緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画を策定し、公表するものとする。これを変更したときも、同様とする。
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答え 誤り 消防長長官では無く、正しくは〈総務大臣〉
第8問【虫食い】
消防庁長官は、政令で定めるところにより、都道府県知事又は市町村長の〈〇〇〉に基づき、必要と認める人員及び施設を緊急消防援助隊として登録するものとする。
第9問【〇✕問題】
消防機関の職員がその属する市町村以外の市町村の消防の応援のため出動した場合においては、当該職員は、応援を受けた市町村の長の指揮の下に行動するものとする。
第10問【〇✕問題】
消防組織法第四十四条第五項に基づく指示を受けて出動した緊急消防援助隊の活動により増加し、又は新たに必要となる消防に要する費用のうち当該緊急消防援助隊の隊員の特殊勤務手当及び時間外勤務手当その他の政令で定める経費は、政令で定めるところにより、国が負担する。
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