避難器具と避難通路の関係性 敷地内の避難通路の幅員の基準を解説!

立体的な降下空間のイメージ 避難設備

避難器具によって避難空地の大きさって違うけれども避難通路の幅員はどうかな?

避難器具で地上に降りてからの避難通路って幅員とかの基準ってあるの? 最低基準や避難器具の必要数の考え方を教えて!

避難器具の設置根拠条項は消防法施行令第25条第1項各号となりますが、用途や階に応じて適用する避難器具の種類が異なり第2項に定められています。今回のポイントとして深掘りするのは告示基準で定められる避難空地と避難通路であり、上記のような疑問を解決します。

避難はしご設置の5つのポイント 見落としは無い?

避難器具を設置するときに考えなければならない基準がいくつかありますが、今回は避難はしごに着目して考えてみます。設置に確認すべきポイントとして次の5点に注目して下さい。

避難はしご設置時に確認すべき設置場所の5ポイント
  1. 開口部の大きさ
  2. 開口部前の操作面積
  3. 安全な降下空間
  4. 降りた場所となる避難空地
  5. 敷地外まで避難するための避難通路

1~3のポイントは避難器具を設置するまでによく検討され、建物を使用してからも大きく変わることは少ない印象です。開口部の大きさが設置する窓枠に開口制限や手すりが設置されない限り変化はありません。開口部前の操作面積は基準上0.5m四方とそれほど大きくもありません。周囲等に物品が多量に置かれ物置化しない限りは大丈夫です。安全な降下空間については庇等を新たに設けない限り大丈夫です。

これらの1~3のポイントについては設置後に違法状態となっても割と「目立つ違反」であるため、立入検査等での違反指摘で是正させるにも大きな労力や費用が掛からないことが多いです。しかし、立入検査でも見落としたり建物所有者も意図せずに違法状態となってしまう可能性が高いのが4及び5の避難空地と避難通路です。

避難空地の長辺は避難通路に求められる幅員になる!

避難空地とは「避難器具の降着面等付近に必要な避難上の空地」のことを指し、避難通路とは「避難空地から避難上安全な広場、道路等に通ずる避難上有効な通路」のことを言います。

各用語の定義
避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(平成八年四月十六日消防庁告示第二号)
  • 操作面積 避難器具を使用できる状態にするための操作に必要な当該避難器具の取付部付近の床等の面積をいう。
  • 降下空間 避難器具を使用できる状態にした場合に、当該避難器具の設置階から地盤面その他の降着面(以下「降着面等」という。)までの当該避難器具の周囲に保有しなければならない避難上必要な空間をいう。
  • 避難空地 避難器具の降着面等付近に必要な避難上の空地をいう。
  • 避難通路 避難空地から避難上安全な広場、道路等に通ずる避難上有効な通路をいう。

避難空地で周囲に安全な空地を確保させるとともに、そこから避難上安全な広間や道路までを避難通路で確実に繋ぐ基準となります。

ではこれらに求められる基準を告示で見ていきましょう。

避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目
第三 一 避難はしご
(一) 避難はしご(避難器具用ハッチに格納した金属製避難はしごを除く。)

ホ 降下空間は、縦棒の中心線からそれぞれ外方向(縦棒の数が一本のものについては、横桟の端からそれぞれ外方向)に〇・二メートル以上及び器具の前面から奥行〇・六五メートル以上の角柱形の範囲とすること。

ヘ 避難空地は、降下空間の水平投影面積以上の面積とすること。

ト 避難空地には、当該避難空地の最大幅員(一メートルを超えるものにあっては、一メートルとすること。)以上で、かつ、避難上の安全性が確保されている避難通路が設けられていること。

降下空間→避難空地→避難通路と求められる基準は降下空間から準用されていることが分かります。降下空間で必要とされる空間ははしごの縦棒から左右に200㎜以上と背中側に650㎜以上です。はしご幅が400㎜であれば800㎜の幅の降下空間が必用になります。避難通路は避難空地(降下空間)の最大幅員以上の幅員が求められるため、この場合は幅員800㎜以上の避難通路が必用となる訳です。カッコ書きの中で避難空地の最大幅員が1mを超えるものは1m以上の避難通路で良いとされていますね。

もし仮に250㎜以下の幅の避難はしごがあれば避難空地の最大幅員は背面側の650㎜となるため避難通路の最低基準は650㎜以上ということになります。避難空地(降下空間)の長辺が避難通路幅に求められる幅になることを覚えましょう!

ちなみにハッチ式の吊り下げ梯子の場合は避難器具用ハッチの開口部から降着面等まで当該避難器具用ハッチの開口部の面積以上を有する角柱形の範囲が避難空地(降下空間)となるため、ハッチの開口部幅以上の避難通路で良いことになります。

避難通路の違反を見抜くポイントは駐車場やフェンスの設置

建築時や避難器具の設置検査時は避難通路が確保されていても、後々の使用方法により基準に適合しなくなるパターンがあります。

よくある例としては専用庭のフェンスを設けたり、駐車場を避難通路上に設けてしまい、敷地外へと避難通路が続かなくなってしまうことがあります。立入検査で避難器具の設置位置を確認したら、避難通路にも気を配る必要があることを覚えておきましょう。

避難通路上に駐車場を設けたため基準に適合しなくなった例

他にも敷地文筆&売却により避難通路の基準を満たせなくなってしまう例もありますので注意が必用です。しかし、これらは一概に違反と言えない場合もあるため避難器具の設置時期にも配慮する必要があるため以下解説します。

平成9年4月1日以前から設置される避難器具の当該規定はなお従前の例による!?

避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目が平成8年4月16日に消防庁告示第二号として発出されましたが、それ以前は降下空間や避難空地、避難通路といった基準は定められていませんでした。なので極端な話、「避難器具で地上まで降りられればその後はなんとかなるでしょう」といった考え方に近く、避難通路が全く無い状態でも法令基準上問題ありませんでした。

それらの避難通路を全く考えられていなかった防火対象物を全て違反とする訳にもいかないため平成8年4月16日付け消防予第66号で運用上の留意事項として非遡及が定められます。

平成9年4月1日において現に存する防火対象物若しくはその部分又は現に新築、増築、改築、移転、修繕若しくは模様替えの工事中の防火対象物若しくはその部分における避難器具のうち、告示の規定に適合しないものに係る技術上の基準については、当該規定にかかわらず、なお従前の例によることとされていること。

なお、従前の防火対象物の避難器具についても、増設、取替え等の際には、告示の基準に基づいて設置することが望ましいこと。

平成8年4月16日付け消防予第66号 3運用上の留意事項より一部抜粋

まとめ

避難通路で必用な幅員は避難空地の長辺以上が求められますが最大でも1mになります。これらの基準の適用は平成9年4月1日であったためそれ以前の避難器具には告示内容は適用されません。

法令に基づく仕事であることを自覚し、指導できる範囲と超える範囲を見定めましょう!

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