防炎物品を使用する義務がある用途と防炎防火対象物の違いとは何?

ホテル等の防炎物品の使用例 防火防災管理関係

防炎について消防法第8条の3を勉強しているんだけど、防炎物品とか防炎対象物品、防炎防火対象物とかよく似た言葉が出てきて整理ができなくなっちゃったよ(汗)

防炎物品に求められる性能や、使用しなくてはいけない用途を分かり易く教えて!

高層建築物や地下街等、特定用途防火対象物をではカーテンやじゅうたん、展示用合板を使用する場合防炎物品である必用があります。防炎物品は残炎時間や炭化面積、溶融し尽くすまでに必要な炎を接する回数が基準以上のものであり、延焼拡大抑制効果があります。建築物の主要構造部や内装材は一定の基準により延焼拡大抑制機能を有していますが。収容される可燃物によってはそれらの主要構造部や内装制限の効果が薄れるぐらいに延焼拡大する可能性があります。

火災初期の延焼拡大方法は、まず壁体や収容物を媒体として天井方向へと炎は進みます。そして天井へと炎が到達すると、到達点を中心に放射状に室内全体へと進行方向を変え、出火室全体が可燃物が発火するような温度となりフラッシュオーバーへと進行していきますね。

防炎物品を使用する目的は出火点から壁体等への進行、床面付近から天井方向へと延びるような可燃物に対し延焼拡大を抑制することです。

この記事ではそんな防炎物品を使用しなければならない用途と求められる性能について解説します!

防炎物品を使用しなければならない用途と〈防炎防火対象物〉は異なる!

〈防炎防火対象物〉は別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十二)項ロ及び(十六の三)項に掲げる防火対象物を指します。

防炎防火対象物については16項の取り扱いについても記載されており、「別表第一(十六)項に掲げる防火対象物の部分で前項の防炎防火対象物の用途のいずれかに該当する用途に供されるものは、同項の規定の適用については、当該用途に供される一の防炎防火対象物とみなす。」とされています。

防炎物品を使用しなければならない用途は高層建築物、地下街、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十二)項ロ及び(十六の三)項に掲げる防火対象物、工事中の建築物その他の工作物(総務省令で定めるものを除く。)であり、防炎防火対象物よりも規制範囲が広いことが分かります。

消防法第八条の三 第1項

高層建築物若しくは地下街又は劇場、キャバレー、旅館、病院その他の政令で定める防火対象物において使用する防炎対象物品(どん帳、カーテン、展示用合板その他これらに類する物品で政令で定めるものをいう。以下同じ。)は、政令で定める基準以上の防炎性能を有するものでなければならない。

施行令第四条の三(防炎防火対象物の指定等)

法第八条の三第一項の政令で定める防火対象物は、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十二)項ロ及び(十六の三)項に掲げる防火対象物(次項において「防炎防火対象物」という。)並びに工事中の建築物その他の工作物(総務省令で定めるものを除く。)とする。

2 別表第一(十六)項に掲げる防火対象物の部分で前項の防炎防火対象物の用途のいずれかに該当する用途に供されるものは、同項の規定の適用については、当該用途に供される一の防炎防火対象物とみなす。

工事中の建築物その他の工作物(総務省令で定めるものを除く。)の対象は?

工事中の建築物その他の工作物でも総務省令で定めるものは対象から除かれています。規則第4条の3で定められる下記以外のものが除かれます。

ややこしい書き方ですが「除く」の「次の各号以外」であるため、下記は防炎物品を使用しなければならない用途となりますよ。

  • 建築物(都市計画区域外のもつぱら住居の用に供するもの及びこれに附属するものを除く。)
  • プラットホームの上屋
  • 貯蔵槽(屋外タンク、高架水槽)
  • 化学工業製品製造装置(化学プラント等の施設の一体)
  • 前二号に掲げるものに類する工作物(煙突、広告塔)
消防法施行規則第四条の三 第1項

令第四条の三第一項の総務省令で定めるものは、次の各号に掲げるもの以外のものとする。

  1. 建築物(都市計画区域外のもつぱら住居の用に供するもの及びこれに附属するものを除く。)
  2. プラットホームの上屋
  3. 貯蔵槽
  4. 化学工業製品製造装置
  5. 前二号に掲げるものに類する工作物

防炎対象物品とは?

防炎対象物品は〈カーテン等の垂直方向の延焼媒体物〉、〈じゅうたん等〉、〈展示用合板〉に大きく分けることができます。防炎対象物品は、政令で定める基準以上の防炎性能を有するものでなければならないとされています。

施行令第四条の三 第3項

法第八条の三第一項の政令で定める物品は、カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゆうたん等(じゆうたん、毛せんその他の床敷物で総務省令で定めるものをいう。次項において同じ。)、展示用の合板、どん帳その他舞台において使用する幕及び舞台において使用する大道具用の合板並びに工事用シートとする。

規則第四条の三 第2項

令第四条の三第三項の総務省令で定めるもの(以下「じゆうたん等」という。)は、次の各号に掲げるものとする。

  1. じゆうたん(織りカーペット(だん通を除く。)をいう。)
  2. 毛せん(フェルトカーペットをいう。)
  3. タフテッドカーペット、ニッテッドカーペット、フックドラッグ、接着カーペット及びニードルパンチカーペット
  4. ござ
  5. 人工芝
  6. 合成樹脂製床シート
  7. 前各号に掲げるもののほか、床敷物のうち毛皮製床敷物、毛製だん通及びこれらに類するもの以外のもの

カーテン等の垂直方向の延焼媒体物

  • どん帳
  • カーテン
  • 布製のブラインド
  • 暗幕
  • どん帳
  • その他舞台において使用する幕
  • 工事用シート

じゅうたん等の水平方向の延焼媒体物

  • じゅうたん(織りカーペット)
  • 毛せん(フェルトカーペット)
  • タフテッドカーペット、ニッテッドカーペット、フックドラッグ、接着カーペット及びニードルパンチカーペット
  • ござ
  • 人工芝
  • 合成樹脂製床シート
  • 上記以外の床敷物のうち毛皮製床敷物、毛製だん通及びこれらに類するもの以外のもの

展示用合板

  • 展示用の合板
  • 舞台において使用する大道具用の合板

求められる防炎性能は3つに区分される!

求められる防炎性能については次の5種類の考え方に分かれています。

  • 残炎時間
  • 残じん時間
  • 炭化面積
  • 炭化長
  • 接炎回数

これらの防炎性能をどれだけ必用とするかは、炎を接した場合に溶融するかどうかで大きく分かれます。

求められる防炎性能についての判別フロー

炎を接した場合に溶融する性状の物品(じゆうたん等を除く。)に求められる防炎性能

一 物品の残炎時間(着炎後バーナーを取り去つてから炎を上げて燃える状態がやむまでの経過時間をいう。)が、二十秒を超えない範囲内において総務省令で定める時間以内であること。

二 物品の残じん時間(着炎後バーナーを取り去つてから炎を上げずに燃える状態がやむまでの経過時間をいう。)が、三十秒を超えない範囲内において総務省令で定める時間以内であること。

三 物品の炭化面積(着炎後燃える状態がやむまでの時間内において炭化する面積をいう。)が、五十平方センチメートルを超えない範囲内において総務省令で定める面積以下であること。

四 物品の炭化長(着炎後燃える状態がやむまでの時間内において炭化する長さをいう。)の最大値が、二十センチメートルを超えない範囲内において総務省令で定める長さ以下であること。

五 物品の接炎回数(溶融し尽くすまでに必要な炎を接する回数をいう。)が、三回以上の回数で総務省令で定める回数以上であること。

じゅうたん等に求められる防炎性能

一 物品の残炎時間(着炎後バーナーを取り去つてから炎を上げて燃える状態がやむまでの経過時間をいう。)が、二十秒を超えない範囲内において総務省令で定める時間以内であること。

四 物品の炭化長(着炎後燃える状態がやむまでの時間内において炭化する長さをいう。)の最大値が、二十センチメートルを超えない範囲内において総務省令で定める長さ以下であること。

その他の物品に求められる防炎性能

一 物品の残炎時間(着炎後バーナーを取り去つてから炎を上げて燃える状態がやむまでの経過時間をいう。)が、二十秒を超えない範囲内において総務省令で定める時間以内であること。

二 物品の残じん時間(着炎後バーナーを取り去つてから炎を上げずに燃える状態がやむまでの経過時間をいう。)が、三十秒を超えない範囲内において総務省令で定める時間以内であること。

三 物品の炭化面積(着炎後燃える状態がやむまでの時間内において炭化する面積をいう。)が、五十平方センチメートルを超えない範囲内において総務省令で定める面積以下であること。

防炎物品と通称防炎シールについて

防炎対象物品又はその材料で前項の防炎性能を有するものを防炎物品と言い、防炎性能を有するものである旨の表示を附することができます。

日本防炎協会HPより画像引用
消防法第八条の三

2 防炎対象物品又はその材料で前項の防炎性能を有するもの(第四項において「防炎物品」という。)には、総務省令で定めるところにより、前項の防炎性能を有するものである旨の表示を付することができる。

3 何人も、防炎対象物品又はその材料に、前項の規定により表示を付する場合及び産業標準化法(昭和二十四年法律第百八十五号)その他政令で定める法律の規定により防炎対象物品又はその材料の防炎性能に関する表示で総務省令で定めるもの(次項及び第五項において「指定表示」という。)を付する場合を除くほか、前項の表示又はこれと紛らわしい表示を付してはならない。

4 防炎対象物品又はその材料は、第二項の表示又は指定表示が付されているものでなければ、防炎物品として販売し、又は販売のために陳列してはならない。

5 第一項の防火対象物の関係者は、当該防火対象物において使用する防炎対象物品について、当該防炎対象物品若しくはその材料に同項の防炎性能を与えるための処理をさせ、又は第二項の表示若しくは指定表示が付されている生地その他の材料からカーテンその他の防炎対象物品を作製させたときは、総務省令で定めるところにより、その旨を明らかにしておかなければならない。

おわりに

防炎物品を使用しなければならない用途と火災初期から拡大するプロセスに対策するという防炎物品の目的はよく理解でしましたか。立入検査で違反指摘するときも「法律で定められていますから」という説明ではなかなか理解を得る事は難しいです。用途の性質と防炎物品の目的を説明したり、火災拡大のプロセスを説明すると効果的ですよ。

〈防炎防火対象物〉は別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十二)項ロ及び(十六の三)項に掲げる防火対象物

防炎物品を使用しなければならない用途は高層建築物、地下街、〈防炎防火対象物〉、工事中の建築物その他の工作物(総務省令で定めるものを除く。)であり、防炎防火対象物よりも規制範囲が広い!

予防技術検定にチャレンジ! 防炎編

チャレンジ問題1

消防法第8条の3に定められる防炎性能を有する防炎対象物品を使用しなければならない防火対象物の用途について誤っているものを1つ選べ。

  1. 消防法施行令別表第1(3)項ロ
  2. 消防法施行令別表第1(6)項ハ
  3. 消防法施行令別表第1(12)項ロ
  4. 消防法施行令別表第1(13)項イ
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答え 4 (12)項ロはテレビスタジオや映画スタジオであり防炎物品を使用する必要がある。(13)項イは駐車場であり、防炎の対象ではない。
チャレンジ問題2

消防法第8条の3に定められる防炎性能を有する防炎対象物品を使用しなければならない防火対象物の用途について誤っているものを1つ選べ。

  1. 高さ31メートルの共同住宅
  2. 地下街
  3. 16項イにおける6項イ(4)の部分
  4. 16項イにおける12項ロの部分
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答え 1 高層建築物の定義は31mを超えるという点に注意しよう!(消防法第8条の2参照)

チャレンジ問題3

消防法第8条の3に定められる防炎性能を有する防炎対象物品を使用しなければならない防火対象物についての記述について、誤っているものを1つ選べ。

  1. 工事中の建築物に使用される工事用シートは防炎性能を有する必要がある。
  2. カーテンに求められる防炎物品としての性能は炎を接した場合に溶融する性状を有していれば、物品の残炎時間、残じん時間、炭化面積、炭化長及び接炎回数について一定の基準を満たすことが要求されている。
  3. じゅうたん等に求められる防炎物品としての性能に物品の残じん時間、炭化面積及び接炎回数について一定の基準を満たすことは求められていない。
  4. 炎を接した場合に溶融する性状を有しない展示用の合板に求められる防炎物品としての性能は、物品の残炎時間及び物品の炭化面積についての2種類だけである。
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答え 4 2種類だけではなく、残じん時間についても要求されます。カーテンとじゅうたんで要求される性能が異なる点についても確認しよう!

チャレンジ問題4

消防法施行令第4条の3に定められる防炎性能についての記述について、誤っているものを1つ選べ。

  1. 残炎時間とは着炎後バーナーを取り去ってから炎を上げて燃える状態が止むまでの時間経過をいう。
  2. 残じん時間とは着炎後バーナーを取り去ってから炎を上げずに燃える状態が止むまでの時間経過をいう。
  3. 炭化面積とは着炎後燃える状態が止むまでの時間内において炭化する面積をいう。
  4. 接炎回数とは物品が燃焼を始めるまでに必要な炎を接する階数をいう。
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答え 4 接炎回数は溶融し尽くすまでに必要な炎を接する回数のことです。この性状の特色として、炎を接したときに溶融する性状の物品にしか求められない基準です。関連付けて覚えましょう!

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