非常警報設備と非常警報器具を深掘り! 設置根拠や自火報との違いを解説!

中高層建築物における火災によりビルから煙が出ている 警報設備

非常警報設備と自動火災報知設備の関係性って難しいよね。法文ではななかな理解が進まない…

警報設備のそれぞれの特徴を教えて!

無窓階における収容人員の算定から非常警報設備の設置要否はどう考えるの?

この記事では非常警報設備の設置に関して消防法令の見方を解説し、上記のような疑問を解決します。

非常警報器具や非常警報設備、自火報の設置根拠や各設備の特徴の違い!

非常警報設備と非常警報器具、これら消防用設備の設置根拠は消防法施行令第24条に定められており、用途と収容人員により設置要否が決定します。自動火災報知設備は考え方が異なり、用途と面積で設置要否が決定し、根拠となるのは施行令第21条です。

これらの警報設備の設置要件の違いはどこにあるのでしょうか?警報設備の特徴について考えてみましょう。

一番の違いは火災発生から在館者へそれを周知するまでの時間です。

非常警報器具や非常警報設備は自動火災報知設備と比べると火災が発生した時に、在館者へ周知するまでのスピードが劣ります。

自動火災報知設備は火災発生時に天井面等に取り付けられた感知器が、熱や煙を感知すると同時に在館者へ一斉に周知を行います。

しかし、非常警報設備や非常警報器具は火災発生から火災発見までの時間発見から設備を使用するまでの時間を要するものであり、「人の行動時間」が自動火災報知設備より余計に掛かるわけです。

「あ、火事だ!みんなに知らせなくちゃ!!」

火災を発見するまでに時間を要すれば、初期消火できないほどに火災が成長している可能性もあります。

しかし、感知器や受信機を設置しない分、非常警報設備は圧倒的に安価です。非常警報器具に至っては配線すら不要です。コストに応じた能力差になりますね。

今回はそんな警報設備の中でも安価な「非常警報器具」、「非常警報設備」について解説します。

非常警報器具の設置を要する規模用途

非常警報器具 いわゆるハンドマイク等を指します。

非常警報器具は次の用途のうち、収容人員が20人以上50人未満のものに義務付けされています。

  • 4項
  • 6項ロ
  • 6項ハ
  • 6項ニ
  • 9項ロ
  • 12項
施行令第二十四条 第1項(非常警報器具)

非常警報器具は、別表第一(四)項、(六)項ロ、ハ及びニ、(九)項ロ並びに(十二)項に掲げる防火対象物で収容人員が二十人以上五十人未満のもの(次項に掲げるものを除く。)に設置するものとする。ただし、これらの防火対象物に自動火災報知設備又は非常警報設備が第二十一条若しくは第四項に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置されているときは、当該設備の有効範囲内の部分については、この限りでない。

非情警報設備の設置を要する規模用途

非常警報設備 非常ベルやサイレン

あれ? もっと危険性の高い用途があるはずなのに・・・と感じたように、より危険性の高い用途では非常警報設備が収容人員20人以上で義務付けられます。

  • 5項イ
  • 6項イ
  • 9項イ

これ以外の用途では収容人員が50人以上又は地階及び無窓階の収容人員が20人以上で非常警報設備の設置が義務付けられます。

ここでミニテストです。無窓階が複数ある場合、無窓階の収容人員は合算して非常警報設備の設置が必要になると思いますか?それとも無窓階ごとに20人を判断すると思いますか?

答えは合算します。それは「防火対象物で…(中略)…地階及び無窓階」と定められていますよね。この及びが地階や無窓階の危険性の高い階全てを纏めています。

筆者もこれを見落とし、頭を下げた苦い経験が… 消防法施行令逐条解説にも書かれていますので気になる方はご一読ください。

非常警報設備が必要となる例(無窓階を含む場合)
施行令第二十四条 第2項(非常警報設備)

非常ベル、自動式サイレン又は放送設備は、次に掲げる防火対象物(次項の適用を受けるものを除く。)に設置するものとする。ただし、これらの防火対象物に自動火災報知設備が第二十一条に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置されているときは、当該設備の有効範囲内の部分については、この限りでない。
一 別表第一(五)項イ、(六)項イ及び(九)項イに掲げる防火対象物で、収容人員が二十人以上のもの
二 前号に掲げる防火対象物以外の別表第一(一)項から(十七)項までに掲げる防火対象物で、収容人員が五十人以上のもの又は地階及び無窓階の収容人員が二十人以上のもの

警報設備は上位設備を設置することでも法令を満足する! 警報設備を設置するなら自火報以上がオススメ!

令第24条の第1項及び第2項では非常警報器具や非常警報設備の設置要件が記載されていましたね。同時に、上位設備である自火報(非常警報器具の場合は非常警報設備が上位設備となる)を設置した場合には自火報の有効範囲の部分には非常警報器具や非常警報設備の設置が不要になるとされています。

上位設備の関係性は次のように表せます。

非常警報器具 < 非常警報設備 < 自火報 < 自火報+放送設備

小規模な防火対象物で自火報の設置義務が生じない場合は警報設備が収容人員で設置される可能性があります。法令上、非常警報器具や非常警報設備の設置で問題が無かったとしても、自火報を設置することを強くお勧めします。

その理由は何度も説明するように、火災発生から在館者へそれを周知するまでの時間が自火報の方が圧倒的に速いからです! 法律というのはあくまで最低基準です。防火安全を意識し自火報の設置を積極的に推しましょう!

予防技術検定にチャレンジ! 非常警報器具、設備編

チャレンジ問題

 次の防火対象物のうち非常警報器具の設置が必要でないものを1つ選べ。ただし、いずれも収容人員は30人とする。

  1. 3項ロ
  2. 4項
  3. 6項ハ
  4. 12項イ
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答え 1

コメント

  1. 通りすがり より:

    5項イで、特小自火報を設置する場合、
    20人で非常警報設備は設置が必要ですか?特小自火報で代替え可能でしょうか?

    • あっちゃん より:

      通りすがり様、コメントありがとうございます。以下のロジックにより代替可能と考えます。消防法施行令第24条第2項に基づき、5項イは収容人員20人以上で非常警報設備が必要となりますが、同令第5項により自火報を令第21条に基づき設置した場合はその部分の非常警報設備の設置が不要となります。特小自火報は令第29条の4に基づく必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に該当するため特小自火報を設置した場合、令第21条に基づく一般の自火報に替えて設置していると解せます。

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